番外編 ㊳

トランス





<番外編 ㊳>





中村製作所のノイズカットトランスである。
音楽はノイズとの戦いだ。
静粛の中に立ち上がる音像が美しければ美しいほど、リスナーはノイズを嫌う。
目の前の美を瀆す汚泥のように感じられる。
その泥を濾過する装置がこれだ。
オーディオマニアは僅かな事象の差に拘り、一般に神経質である。
また、そうでなければオーディオマニアとして存続し得ない。
細かい事などどうでもいい = オーディオなんかなんでもいいという事になってしまうからである。
ただし拘る僅かな事象も神経質になる対象も、すべて自らの興味が及ぶ範囲に限定されている事を正直に申告しておく必要がある。
目の前の「美」が他の人には醜いノイズかもしれない可能性は、その際一顧だにされて来なかった。
私はその事を(いつも少々であるが)申し訳なく思って来、いつしか趣味の押し付けが難しい事もついでに悟った。

ノイズカットトランスは残留ノイズを除去しない。
除去するのはもっぱら音本体に付帯する不純物だ。
杜氏が米を磨き大吟醸に仕上げる様に、ノイズカットトランスは電流に含まれる夾雑物を丹念に削ぎ取り音を研磨する。
残留ノイズを除去するのはアンプ側の仕事だ。
我が国の高級アンプはこの点が完璧に出来ており、音楽を映し出すスクリーンを静寂に保つ。
しかし描かれた音楽は勢いを削がれ、それを挽回するためか輪郭が不自然に強調されがちだ。
その事に気付いてから、日本製のアンプを使わなくなった。

私は残留ノイズが嫌いだ。
でもそれ以上に勢いのない音が嫌いだ。
だからアンプ側と取引きし、一定程度の残留ノイズを許すかわりに勢いを確保した。
無音時にホーンに肉迫すればノイズが聴こえてくる。
私はこれに目を瞑る事にした。
中学3年の時、亡き伯父が買ってくれた日立のステレオから聴こえた残念な残留ノイズだった。
いつかこれを消してやる。
そう誓ってから半世紀近い時が過ぎた。
随分やった。
存分にやったと思う。
結局私のオーディオから残留ノイズを消し去る事は叶わなかった。
だが私の力でもうこれ以上は無理だ。
今出ているこの音が、私のオーディオマニアとしての一度の人生で、達成可能であった限界点という事になるだろう。

右のランプは40年前ある事の褒美に頂戴したもので、確かエジプト製だった筈だ。
適応器具は無論白熱球だが、その生産が終了した今ではLED電球で対応する事になる。
実際常夜灯のナツメ球が切れLEDに代えてみた。
やはり全然違うものだとすぐに識別できる。
時代は既に次のステージへと移行しており、もはや異議申し立てを受付けない。
不満があっても、愚痴を言いつつトボトボついて行くしかないのだ。











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Re: お久しぶりです。

鈴木さん、お元気そうで何よりです。
大変興味深いお話しをありがとうございます。

我が家を建てたのは30年前でした。
私は音楽ファンではありましたが、今ほどのオーディオマニアではなく、
まったく知識もなかったせいで特別な対策を思いつきませんでした。
そもそもオーディオ好きだったのですから、
その時点で将来の自分像がいくらか予測できていれば良かったと少し残念です。

後日、オーディオ用に配電盤を分け、電線を引き壁コンセントを設置するなどの工事をしました。
それが非常に効果的である事は身をもって体験しました。
建物側の対策はとても重要ですね。
けれども後からではもう間に合わない項目もあります。
床や壁の強度、構造といった事や、防音対策などです。
とりわけ床の強度が重要ですね。

最近になり知人が家を建てました。
彼はオーディオマニアではありませんでしたが、
私の影響で石井式のオーディオルームを設えました。
とても響きが美しく、機材は大したことがなくとも次元の違う音が出ます。
私には到達不能な音でした。

知人はあと10年経って生存している時にはその家を売りマンションに移るそうです。
家がデカ過ぎて夫人から掃除が大変だと苦情が出ているからです。
それならお手伝いさんを雇ったら?と提案しましたが、それは趣味ではないらしい。






お久しぶりです。

ノイズ対策は同感です。ノイズ完全に除去すると、音は生々しさがなくなりCDのような音源になります。
私は自宅の新築の時、以下のことを実施しました。
1.地中アースは、最近基礎の鉄筋に取付けます。これでは完全なアースではな  いので、地中のアース棒を差し込みました。
2.ブレーカはアナログオーディオ専用に1ケ追加して、洗濯機などモーター類  から遠ざけました。ブレーカーから壁の電材も一回り太い線を使いました。  このブレーカのみ独立で地中アースにしました。
3.壁のコンセントはアース付きにしましたので、レコードプレーヤのアースな  どもダイレクトに地中に行きます。機器のアースはかなりノイズマージンが  上がっています。プリとパワー間のケーブルにアルミホール(調理用の安 
  物)を巻きアース線をハンダ付けして壁のアースに繋ぐとかなりノイズが減  ります。無音でアンプのVRを上げてみますと、このアースがあるのと無いの  とでは差が歴然です。
4.デジタル機器からノイズが出ていて、アナログアンプは無防備ですので、拾  ってしまいます。電源のひとつの延長コードにはデジタルとアナログを差し  込まない方が良いそうです。特にCDプレーヤーからでるとか。
5.さらに、オヤイデの電源コンセントを付けて重量の重いタイプで音の締りを  期待しました。。型番は忘れました。

新築の際に少し費用かかりましたが、オヤイデ以外は何も対策しないで効果がでていると信じています(笑)
LUXを退職した人から聞きましたが、球を選別して組み込んでいたそうで、データの良い物が良い音とは限らないそうです。データは悪くても(ノイズなど)音楽性のあるものは多く、そこが選別の時間のかかるところだったそうです。多少ノイズはあっても音の良い球を使うことが、本当の音の良い真空管アンプ造りのようです。
小生の浅い知識のひとつです。
ほんまでっか!の精神で読んでいただければ幸いです。
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Author:バロン ド バップ
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