(299) ON FIRE

No.299 2015.6.11
<ON FIRE>
これもよく見たら女性はほぼ裸らしい。
バーニー・ケッセルの鼻の下がのびてニヤついている。
しょーがねーなぁ。
本作はハリウッドにあったジャズクラブ「P.J's」におけるバーニー・ケセルのライブ盤だ。
彼のライブ録音自体が珍しいが、本作をリリースしたエメラルド・レコードが更にレアである。
なにしろこれ一枚きりだ。
プロデューサーがフィル・スペクター。
そう、アルバム「LET IT BE」をプロデュースし、「ロング・アンド・ワインディングロード」に女声コーラスをオーバーダビングしてポール・マッカートニーを激怒させたあの男だ。
フィル・スペクターは過去何度かバーニー・ケッセルをスタジオワークで雇っており、そうした繋がりから本作へと発展したようだ。
ケッセルのギターにベースとドラムのトリオと言えば1957年録音(本作は1965年録音)の有名盤「ポール・ウィナーズ」を踏襲したもので、そうした所にフィル・スペクターの抜け目のなさが窺えるがこちらはヒットせずエメラルド・レコードは潰れた。
収録ナンバーの「いそしぎ」は今日スタンダードとなっている。
本作と同じ1965年の映画のテーマ・ソングであった。
約3年半に渡り、主にこうして好きなジャズのレコードを紹介してきた。
それは畢竟過去について語る事に繋がった。
私の人生の大部分がもう既に過去に属しているからだろう。
だが昔話ばかりでは面白くないのだ。
言ってる本人が面白くないから、見ている方は当然そうだと思う。
とはいえ外交問題同様に未来志向で物事を扱うのは容易くないのも事実だ。
既に定まった過去を語ることなら出来ても、未だ見ぬ未来を(それも楽観的に)語るとなると骨が折れる。
どのように想像力を働かせても先の事は読み難いものだ。
悲観論ならいくらでも言えるけれど、そんな話を聞きたい人はいない。
さりとてバラ色の夢物語ばかりしても、とりとめのない夢想や戯言に過ぎないからこれも面白くない。
ではどうする。
今を語るのだ。
つまり日記ということだ。
「移ろいゆく浮世に竿さすジャジーな毎日を綴ります」
なかなかそうもいかなかったが、私は冒頭そのように宣言している。
話を組み立てるという作業は頭の体操に調度いい。
万一怪しくなってきたら、いよいよそういう方向も考えなければならないだろう。
そんな風に考えている。
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