(290) カメラが聴いたジャズ

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No.290 2015.5.8




<カメラが聴いたジャズ>





本作はアメリカ西海岸を代表する写真家ビル(ウィリアム)・クラクストンを描いたドキュメンタリー映画のサウンドトラックである。
ライナーノーツに語られた「われわれは絵画について語る非礼を詫びるべきである」との言葉を重く受け止めつつ、この映画とそのサウンドトラックを紹介する。

写真は二度と来ない一瞬を切り取る。
考えてみればレコードも同じだ。
そこにあるのは視覚と聴覚の違いだけだ。
残されたものはその瞬間から一人歩きを始め、全てが視聴する者に委ねられる。

どのようなレベルの記録であろうとも、切り取られた一瞬はその後長期に渡り世に残される。
だからそれを成す側にある種の覚悟を強いるが、多くの場合そのように意識される事はまれだ。
そして残されたものにどのような価値を感じるかも視聴する者それぞれに異なる。
それが救いと言えるかもしれない。
何とも思わない場合も普通にあるからだ。

クラクストンは多くのレコードジャケットを残した。
彼の作品に限らず私にとってレコードのジャケットは極めて重要なものだ。
時には盤本体とどちらがより重要であるか判断に迷うほどだ。
もちろん盤のないレコードは意味がないのだ。
しかしジャケットのないレコードもあり得ない。
ジャケットはレコードの顔だ。
だから音楽配信なんて論外なのである。
昔のジャズファンはレコードを大事にした。
映画の中でデニス・ホッパーが証言する通り、ライブよりも断然レコードだった。
ライブハウスで「イェーイ!」などとやるのにはどこか抵抗があり、私は今でもそれは変わらない。
長い間ジャズは真顔で聴くものだったからだ。

かつてジャズはレコードのジャケットと切り離せない関係にあった。
ジャケットの写真を撮ったカメラマンの重要性は改めて言うまでもなく、カメラマンはクラクストン一人ではないが映画にまでなったのはそれなりに理由がある。
クラクストンの作品はいつも柔らかな光に溢れ、彼の優しい眼差しを通してジャズが幸福だった時代を上手く表すことが出来た。
お人柄ということか。
この映画とサウンドトラックを視聴したあなたがどう感じるか私には分からない。
だがそれを承知のうえで未知の方には是非観てそして聴いて欲しいと思う。
ジャズの新たな地平が開けるかもしれない。

本作の音楽監督はドイツ人トランペッターのティル・ブレナーである。
サウンドトラックに採用されたチェット・ベイカー、ルイ・アームストロング、エラ・フィッツジェラルドなどを除く多くの曲がティル・ブレナーの手によるものだ。
中でもハモンドオルガンB3を効果的に使用した「BLUES FOR PEGGY」は、元祖スーパーモデルでありクラクストンの妻だったペギー・モフィットに捧げられている。








grand encounter









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ジャンル : 音楽

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Re: こんばんは(^^)

文伽さん、こんにちは。

もしレコードにジャケットがなかったら、音楽に興味を持たなかったかもしれません。
昔からレコードは試聴用として各方面に配布されていました。
私のバイト先にも届きましたが、そうした試聴盤すらジャケットは完璧でした。
今では白いCDRが届くそうです。
どうなんでしょうか、音楽業界の明日は。

私の手元にあるティル・ブレナーも、このサウンドトラックを除けば一枚です。
「Chattin' With Chet」チェット・ベイカーへのトリビュート盤ですね。
次回リポートの予定です。

こんばんは(^^)

私も音楽をダウンロードで買うのは嫌ですね。
音楽はアルバムジャケットと共に、
ひとつの世界を作っているものだと思うからです。

レコードの時代、私が聴いていたのは主にロックでしたが、
美しいジャケット、面白いジャケットが沢山ありました。
その大きなレコードジャケットを開く時が、
今からそのアーティストの音の世界にどっぷりと入ってゆく為の、
最初の儀式のようなものでした。
それがCDの小さなジャケットになって、
あの独特の豊かな瞬間は失われました。

そんなレコードの時代から音楽を聴いている世代は、
CDすらでない、何のパッケージングもされてない音楽は、
買う気になれない人が多いのではないでしょうか。

ところで、ティル・ブレナー!
私は『ザット・サマー』を1枚持っています。
ラジオで彼がカヴァーした「アントニオ・ソング」をたまたま聴いて、
思わず買っちゃいました。(^^ゞ
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