番外編 ㊲

む~ら






<番外編 ㊲>






出町柳のジャズ喫茶「む~ら」を訪ねた。
ごく普通の住宅街、ちょっと分かり難い場所にある。
防音対策らしく、入り口のドアが二重になっているが、それでも盛大に音が漏れて来る。
特にズンズンと腹に響く重低音だ。
こりゃー期待出来そうだ。






む~ら1

先客が二人いた。
年配の男女で、おそらくは町内の方だろう。
マスターと楽しく語っておられる。
「どちらの県から?」
マスターが早速相手をしてくれる。
「ええ、北海道です」
「それはそれは、遠いとこからようおこしやしたなあ!」
「観光かなにかで?」
「こちらのお店を訪ねて来ました」
私、こういうセリフを平気で言えます。






む~ら2

スキンヘッドの厳つい店主、ざっくばらんな方で色々と話が弾む。
店内に大きな水槽が二つあり、アロワナを飼っておられた。
ジャズ喫茶で魚(それもアロワナだっせ!)と水槽は初めて見た。
それにしてもペットも様々である。
昨年暮れに20年愛した「紅子」(もちろんアロワナ嬢)を亡くしたとかで寂しそうだった。






む~ら3


かかる曲は少し古め。
モダン以前のものばかりだ。
「家でもレコードかけてはるの?」
「ええ、まあ」
と私。
「オーディオにも凝ってはんの?」
「はあ、それなりに・・・」
「どんなん聴きはりまんの?」
「まあ、色々と何でも聴きますけど(ちょっとこの店の雰囲気と違うかも・・・)」
マスターの方が10歳くらい若いのではないか。
プロレスラーとも地回りのやくざとも見える風貌に、終始気圧され気味だった。
私は昔、河原町荒神口にあった店でバイトしていた話をした。
その店はもう20年以上前になくなっているが、最後のバイトだった男が現在「む~ら」の常連客だという。
聞けばその男は私より10歳以上若いというから、もちろん面識はない筈だ。





しあんくれーる





マスター曰く、夕方一度閉めて片付け夜は毎日ライブだという。
「む~ら」は今年で10年目。
ジャズ喫茶だけなら2年もたなかった、とマスターが言う。
「そうかもしれませんね・・・でも文化財みたいなものですから。私、全日本ジャズ喫茶保存会の者で、日本中のジャズ喫茶を周って採点しているんですよ」
と、ささやかな反撃であるが、この作り話には何か詐欺的なものを想起したかもしれずマスター反応がない。
そろそろ妻が退屈している筈だった。
「頑張ってください、また来ます」

日本中のジャズ喫茶を周ろうと思っているのは本当だ。
急がないと皆なくなってしまう。
ジャズ喫茶の絶滅が先か、私がくたばるのが先かという重大な局面に入りつつある。
我々は「む~ら」を後にした。
とうとうエリック・ドルフィーのリクエストを言い出しかねたまま。









京都4

さて、この日の宿は昨年夏に泊まった「俵屋」の向かい側だった。
同じように何百年もの歴史のある宿だが、今回は新館しか空いておらず思った以上にモダンな空間だった。







京都3


さり気ないが気が利いている。
良く見ると相当贅沢でもある。
しかしけして目立ち過ぎない。
感心したのは風呂だ。
各室に内風呂があり、無論大浴場などというものはない。
檜の浴槽は普通かもしれないが、壁床天井が無垢の天然木で構成されている。
普通ならバスパネルなどの樹脂系の材料か、精々頑張っても石材にするところだ。
だがこの宿の風呂は潔く天然木。
扉も木製だ。
桶も椅子も。
傷んだら交換すればいい、という発想。
これが本物の贅沢なんだろう。

こういった宿では主(たいてい女将)が食事中挨拶に来る。
強いて言えば、あれはやめたらどうだろう。
お互いその方がハッピーだと思う。







京都2

朝まで気が付かなかった。
床の間の壁が二重構造になっていて、朝日が当たると柊の葉が浮かび上がる。







京都1


次第に雨模様へと天候が変わっていった。
我々の部屋は三階だが、坪庭を設えてある。
京の雨は風情があっていい。






京都8


今回残念ながらブルーノートは営業していませんでした。












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Re: 甲府のジャズ喫茶

MKさん、こんばんは。

ジャズ喫茶ってなんかかっこ良かったんですよ。
それは非日常のかっこ良さでした。
そんな雰囲気に少しでも肖りたいと店に通う者もあれば、
私のようにバイトする者までいた。
そして皆店を出たら、コタツでミカン食う安アパートの暮らしへ帰って行きました。
今の若者は金がないとは言っても、あの頃よりずっと豊かです。
ジャズ喫茶的な世界とのギャップが無くなってしまいましたね。
ジャズ喫茶は役割を終えたのかもしれません。

甲府のジャズ喫茶

若い頃私もジャズ喫茶なるものへ出掛けていたことがあります。
拙宅に近かったダウンビートと云う小さな店には、A7が鎮座しておりまして、サイホンで淹れる珈琲は、滅茶薄いものでしたが、ココアが美味しく、いつもオーダーしておりました。
時折店のママが唄うボーカルも聴く事ができた事を覚えております。
『営業時間が終わったら、クラッシックも掛けて良いよ』と云ったお話もあり、ベルリンSQのラズモフスキーを持ち込んで、A7で聴いた事もありました。
遥か昔に閉店しましたが、いまでも懐かしく思い出します。

Re: こんばんは(^^)

文伽さん、おはようございます。

毎日15000歩歩きました。
妻のスマホに万歩計機能があるのです。
ホントに合ってるかどうかわかりませんけど。

旅も歩けなくなってはいけません。
歩けるうちに行かないと。
しかしながら今回はだいぶ疲れました。




こんばんは(^^)

京都に行かれたんですね。
素敵な御宿ですね~。
今月は雨が多くて、いささかウンザリ気味でしたが、
確かに京の雨なら、風情があっていいかもしれません。
渚ゆう子の歌を思い出しました。(古い~ ^^ゞ)
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