(30) ボサノバが蛍の光

りさ
NO.30 2011.12.12




<ボサノバが蛍の光>





このノートも30枚目となった。
ボサノバは日本のジャズファンにはウケが良くない。
シリアスさが微塵もないからだ。
昔バイト先で、切りのいいところでそういうものをかけたものだった。

私がバイトしていたジャズ喫茶は、女性の店主が一切客の前に出ない変わった店だった。
前線で働くのは二人組のバイトで、5チームくらいのローテーションだった。
全員が学生である。

客も学生が多いのだが、彼らは一杯のコーヒー、一枚のトーストでいつまでもネバる。
今では信じられないことだが、満席となり来た客が座れず帰っていくことも珍しくなかった。
そういう時、切りのいいところでボサノバなどをかけたのである。
アンドリュー・ヒルだとかアーチー・シェップだとかの後に聴くと、ホッとするものがあった。

だが、客の彼らは違った。
なんでこんなダサいのをかけるんだ、こんなものを聴きにきたのではないのだぞ、オレは筋金入りのジャズ者だ、ナメるなよ、そんな顔つきでゾロゾロ席を立つのである。
女店主の指示だった。

実際、その当時の客というものは相当滑稽なものだった。
手に手に小難しい本を持ち、サングラスなどかけてやってくる。
タバコはショートピースやゲルベゾルテなど両切りが多く、それを矢継ぎ早に吸うものだから、店内はまさしくスモークを焚いた状態である。
副流煙も受動喫煙も一切知ったことではなかった。

彼らは苦み走り、肩を揺すりコウベを垂れて、リクエストした後期コルトレーンなどに没頭するのだった。
段々興に乗ってくると、店内が共鳴したようなトランス状態となる。
まるで怪しい宗教の儀式を見る思いで我々バイトは彼らを見ていた。
もとよりこちらは仕事であるのだから、何やら切羽詰まった表情でテンパっている向こうとは相当の温度差がある。
はっきり言えば白けているのだ。
さあ、盛り上がるだけ盛り上がったところでボサノバである。
最後までイカせて頂だいと、文句を言う気持ちも分からないではないな。











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