(275) 次の4年が過ぎても

outside by the swing
No.275 2015.3.11



<次の4年が過ぎても>





山中千尋さんのライブに行った。
「MUSIC LAMP」という企画で子供のジャズバンドと一緒に出るらしかったが、あまりよく検討もせずチケットを予約していた。
彼女は現在ニューヨークで暮らす世界的なピアニストだ。
滅多なことで私の町まで来ることなどない。
それに第一3000円と安かったのである。

行ってみて○イ△ン□クラブ主催の相当に気持ち悪いチャリティーであるとわかった。
チャリティが悪いと言うつもりはない。
ただそれを行うものに求めたい。
自画自賛はもとより、自己PRもどうか勘弁して欲しい。
それに会長の挨拶もやめといてもらえると有難い。
このクラブの会長は自分が呼んだ筈のピアニストを「中山千尋」と言った。

コンサートは三部構成だった。
まずは子供ジャズバンド小学生の部から始まった。
身体の小ささ、そして相対的に楽器の大きさが際立つ。
身の丈とたいして変わらないテナーサックスや、明らかに身体よりでかいフェンダー・ジャズベースを抱えて小学生が演奏する。
「サニー」「ウォーターメロン・マン」「A列車で行こう」など数曲を結構いい感じで演る。
スウィングガールズよりは上手い。

続いて中学生バンド。
小学生もそうだったが、圧倒的に女の子が多い。
彼女ら率直に言ってたいしたもんだった。
その辺の高校のブラスバンドなんか全然お呼びでない。
ところでこの子供バンドだが、実は先日お話しした寺久保エレナはここの出身である。


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「セプテンバー」「ナイス・ショット」などをやり、最後に山中千尋さんと一緒に一曲と、チック・コリアの「スペイン」を演奏した。
千尋さん、何を思ってか猛烈な勢いのソロで前奏を弾き倒す。
前奏と言うよりも独立した別の曲だった。
多分これを的確に表現する単語があると思うが知らない。
それを凝視する子供ら。
特に少数派たる男子ピアニストの表情がなんとも言えなかった。
見てはならないものを見、聴いてはならない音を聴いたとでもいうように。
もしかしたらこの夜、彼の人生が変わりはしなかったか。
長い長いイントロが終わり、山中千尋に促されるように、子供ジャズバンドがあの耳慣れた「スペイン」を奏で始めた。
千尋さんの強烈な一撃は、恐らくは自分の名前を間違ってアナウンスした会長や、孫の発表会に駆り出された年寄り連中への名刺代わりだったのだろう。

長尺の演奏が終わり、場内アナウンスが休憩を告げた。
これがなんと40分もの長時間だった。
ロビーに展示したクラブの活動内容を見てくれ、ということのようだった。
もちろん私は席を動かなかったが、この計算外の休憩が中座の原因となる。
そしてある程度予想された通り、休憩に席を立ったきり戻らない人たちが相当数いた。

山中千尋も40歳になった。
冒頭のジャケット写真から華奢な女の子を想像されたのなら全然違う。
彼女相当身体を鍛えていると思う。
背筋が隆起したガッチリ体形だ。
特にバイオハザードチックな前腕の筋肉が凄い。
本作は2005年のメジャー・デビュー作だ。
あれからもう10年経っている。

澤野時代に小さなライブハウスで彼女を見たことがある。
目と鼻の先でピアノを弾く千尋たん、かわいかったな。
その後彼女のピアノは体形と共に力強く変化した。
堂々たる風格すら備わってきた。
だが、澤野時代も私は忘れられない。
どちらがいいか、それは言いたいが何とも言えないところだ。

この日の彼女はあくまでもゲスト扱いで、数曲サラッと演って終わるだろうと思っていた。
その通り、澤野商会のデビュー作「Living Without Friday」や「Take Five」、そしてモンク風と御本人が言う「エリーゼのために」、それに本作から「八木節」などを演奏してステージ終了の段取りとなる。
しかしお約束のアンコール。
長すぎた休憩のせいで、この時約束の時間を10分以上過ぎていた。
こんな筈ではなかったが仕方ない。
アンコールを諦め、小走りに会場を出る。
長時間座り続けた臀部が痺れていた。


今年も3.11が来た。
あれから4年だ。
生きている人には何度でもこの日が巡ってくる。
女が好きな誕生日というやつも同様だが、あの日と今日に何の関係も実際はない。
日付が一緒というだけだ。
エリック・ドルフィーが言ったように、起きた事は過ぎ去り二度と取り戻すことが出来ない。
だが、せめて教訓だけは残さなければなるまい。
そのために3.11というアイコンは意味がある。

過ぎた年月、遠い日々、4年も10年も30年もたいして違いがないように最近では思えてきた。
歳月は人を待たないという点で。










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