番外編 ㉝ 注文の多い料理店

テーブル 4




<番外編 ㉝ 注文の多い料理店>





先週のこと、仕事上の接待で「モ○×△ル」というレストランを使った。
この町ではそれなりに有名ではあるのだが、少し行き辛い場所にあるので私は今回が初めてであった。
先様ご夫婦より遅れてはならず、ワインリストを検討する必要もあったので予約時間の30分前に到着した。

開店したばかりの店にまだ先客はなく、ガランとした無人のテーブルが並ぶ中私たち夫婦は店中央の席に通された。
着席して間もなく、ソムリエバッジを付けた初老の方が来られ、席を間違えましたと言い窓側のテーブルへ移動するよう促された。
接待である旨予めお伝えしていたから、良い席を用意して頂いたのだとは思うが、この手のレストランで席替えというのは初めての事である。

お招きしたお客様が来る前にワインリストを拝見したいとソムリエ氏にお話しした時、私は重大なミスにやっと気付いた。
うっかり老眼鏡を忘れたのである。
目を凝らしてリストを見る。
しかし無論見える筈もない。
やむなく妻に頼んだがどうも埒が明かない。
恥を忍んでお店の方に老眼鏡の用意がないか尋ねてみた。
だがいつまでも回答がない。
ここはソムリエ氏に相談するに限ると、視線を送るのだがなかなか気付いてくれない。
そうこうするうち、早目にお客様が到着してしまった。

ようやく女性スタッフがやってきて「お飲物はどうなさいますか」と言うので「ソムリエの方と相談させてください」とお願いした。
いつもなら3、4本頼む。
だが今回は先方の奥様がさほどお強くないとお聞きしていた。
そこで私はシャンパンのハーフと白赤という作戦を考えていたのである。

シャンパンのハーフはないという。
そのかわりグラスで提供出来るとのことなので、それではグラスのシャンパンとあとはブルゴーニュの白と赤でだいたい3万くらいでお願いしますと言った。
こういった話はぜひお客様が来る前に済ませておきたかったが、もはや仕方なかった。
するとソムリエ氏はこう言った。
「赤だけで3万ですか?」
その時咄嗟にそれを肯定する判断力が働かなかった。
接待だ、ケチな事など言ってはならなかったのだ。
反射神経が鈍くなっている。
私はこのように言ってしまったのである。
「いえ、全体で3万です・・・厳しいですか?」
「・・・仕入担当と相談してみます」
そう言って彼は奥へ引っ込んだ。

その時私の携帯が鳴りだした。
マナーモードにするのを忘れていたのだ。
滅茶苦茶であった。
私は外へ出て用件を済ませ、席へ戻る途中ソムリエ氏のところに寄り言った。
「リストの字が見えないので適当に言いましたが、3万を超えても結構ですから」と。
今度こそ携帯のマナーモード設定を忘れなかった。

店を予約した時、次の二点をお願いしていた。
肉料理を苦手とする妻はシーフードのみとして頂く。
お招きした奥様が生のトマトをお嫌いなので避けて頂く。
以上に加え当日店で、妻が小食なので盛り付けを少な目に(もちろん料金は普通で)とお願いした。
テーブルでお互いの子供の事や仕事上の事などを話し始めた私たちの耳にこんな声が聴こえてきた。
「一人トマト抜き、一人量少な目だ!」
店内から見えない厨房からだった。
先方の奥様が苦笑いされていた。

食事も終盤となった頃、グラスにワインが無くなった。
普通なら何らかのアピールがあるものだし、追加の注文など聞くと思う。
そうしたことはまったくなかった。
私はソムリエ氏を呼んで妻にグラスの白を頼み、そしてお客様に何か召し上がりませんかと尋ねた。
するとソムリエ氏は我々のボトルを持ってきてグラスに注いだのである。
ワインはまだ残っていたのだ。

お勘定は10万を超えた。
この店なんとこれでもミシュランガイドで星を三つ獲得している。
いくら有名であろうとも、初めての店を接待に使うものではないとつくづく思った。
料理の味?
何を食ったか覚えていない。












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Re: あららら

riversideさん、おはようございます。

「調子のってる」ないしは「へのってる」って感じでしょうか。
テレビに出たりしましたからね。
また客がなんか調子のいいことを言っていちいち褒めるんですよ。
「私は違いの分かる客です」的な物言いですね。
それを店のスッタッフが「当然」という顔で聞いてる。
あれ良くないと思いました。
気持ち悪いですし、傍で聞いてる私は。
まあ二度と行かないからどうでもいいんですけどね。





あららら

あの、神社のとこのお店ですかね
もちろんランチでさえ行ったことはないですが(^^;よく、前通るけど
なんだかがっかりなお店なんですねぇ
接待は、ホテルくらいが間違いないんでしょうか…
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