(263) The Poll Winners

the poll winners
No.263 2015.1.31



<The Poll Winners>




ダウンビート誌、メトロノーム誌等の人気投票で1956年度の楽器別ベストプレーヤーに輝いた三人、バーニー・ケッセル(g)シェリー・マン(ds)レイ・ブラウン(b)による企画モノである。
デューク・ジョーダンの「JORDU」やエリントンナンバー「サテンドール」、あのINVITATIONを書いたケイパーの「グリーン・ドルフィン・ストリート」等スタンダードの有名曲で固めてきた。
白人的な洒落たアレンジのジャズで聴き易く作られているのがうけ、売れた。

ヒットに気をよくしたコンテンポラリーは、その後同一の面子による続編を連発する。
このあたりの軽快なフットワークが、コンテンポラリー軽量級のイメージを作ってしまったのだろう。
だいたいブルーノートならあり得ないジャケットだ。

コンテンポラリーの音がなぜ良いのか、という話の続きである。
ジャズが儲からない商売である話は散々した。
そこでレコード会社は何とかして製作費を安くあげようと様々に工夫を凝らした。
コンテンポラリーはスタジオ代を節約するために、自社商品の倉庫を自前のスタジオにしてしまった。
ミュージシャンが演奏する傍らに出荷前の商品が堆く積み上げられてもいるが、コンクリート製で天井が高くたいへん響きの良い空間であったという。

加えてエンジニアのロイ・デュナンが機材にこだわる人だった。
ノイマンU-47、AKG C-12などのドイツ製コンデンサーマイクを用い、ミキシングコンソールが彼の手で自作された。
この当時のドイツ製マイクを上回る物は現在存在しないらしい。
ドイツが東西に分かれた冷戦期にその技術が失われたのだという。
そのためロイ・デュナンが使用したタイプのマイクが、今では1万~2万ドルといった値段で取引されているのだとか。
ストラトキャスターのビンテージモデルに高値が付くのと同じ現象だ。
これ便利だなと思いつつ気に入りながらも、しかし普段手荒に扱っているモノが多数あると思う。
それらが一度失われたが最後二度と手に入らない、というのは実際良くあることだ。

ところでどのような高性能マイクを使用しても、スタジオワークの一次記録がそのままレコードになる訳ではない。
マスターテープの音とは案外ショボいものであるらしく、そこから様々な加工が施され製品となる。
これをマスタリングといい、エンジニアの腕の見せ所でもあるが、なんと皮肉なことに音質劣化の原因ともなるのだ。
マスターテープの音はショボいがフレッシュであったのに、マスタリングで付加される勢いの代償として、やればやるほど最終製品の鮮度が低下してしまう。
ここが難しいところだ。
そこで極力音を劣化させたくなかったロイ・デュナンは、マスタリングの工程を可能な限りシンプルにしダビングを減らしたのである。
リヴァーブや音量などの音質調整を最後のカッティングの際同時に行い、これを詳細なメモに残している。
余談になるがそうとは知らず後年CD化されたものの中に、オリジナルの音と全く異なるダメな製品があり、CDの黎明期に悪い印象を残す一因ともなった。


以上のような事が上手くマッチして、コンテンポラリーの音を作ったのである。
音の良し悪しとはこのような、精一杯の努力と少しの偶然による事が少なくない。
ちょっとしたことで出てくる音がガラッと変わってしまう。
やればやるほど迷路に迷い込み、音が悪くなる事だってある。
だから音の調子がいい時は触らないに限る。
良い音を出すのは難しく、悪くするのは簡単だ。

ロイ・デュナンが録った音から現場の空気感が伝わってくる。
コンテンポラリーに限らず当時の録音現場は、ライブステージのようにミュージシャンが同じ空間で同時に演奏し録られていた。
だから当然マイクが他者の音をも拾う。
実はこれによりリアルな音場表現が出来ていたのだ。
現在のマルチ録音は、ミュージシャンを別々の完全に遮音されたブースに閉じ込めて行われる。
他のミュージシャンの出す音をヘッドホンによってモニターし、それに合わせて演奏する。
そもそもこの方法では同時に演奏する必要すら最早ない。
ギターとベースが別の日に録られても、結果に一切影響しないのだ。
エンジニアには後でどのようにも加工可能なことから、現場をコントロールしやすいと評判がいい。
ミュージシャンとしても自分のパートだけを誰にも迷惑をかける事なく、何度でも納得がいくまでやり直す事が可能だ。
だが、そうして出来上がった音楽に血が通っているだろうか。
スタジオの空気感が伝わるだろうか。
それは何か他の、別のものになって仕舞わないだろうか。










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