(234) もうひとつのWFD

know what i mean
No.234 2014.11.25



<もうひとつのWFD>




もうひとつ、といわず「ワルツ・フォー・デビー」をカバーしたミュージシャン数知れず、多くのバージョンがある。
エバンス自身がデビュー作にてソロテイクを残してもいる。
しかし私にとってのワルツ・フォー・デビーは、エバンスのビレッジバンガードライブと本作に限られ、他はどうでもいい。

ところで当ブログにおけるキャノンボール・アダレイの露出度は低くない。
アルトで言えばジャッキー・マクリーンに肩を並べるほどだ。
それは言うまでもなく、個人的に彼を好むからで、他に理由があるはずもない。

昔ある政治家が「あっけらかんのかー」発言でヒンシュクをかったのを覚えておられるだろう。
実際のキャノンボールの人となりがどうであったか(知らないから)別として、彼のアルトはいつもまさに「あっけらかんのかー」であった。
実質マイルスがリーダーの「サムシンエルス」枯葉で、キャノンボールのソロが始まる瞬間が大好きだ。
光あるところに影がある。
キャノンボールの陽性が、ジャズの陰影を大きく強調する効果を生む。

本作におけるワルツ・フォー・デビーまた然り。
このテイクはエバンスのソロから入る。
心打たれるエバンスらしい演奏である。
う~ん・・・いい・・・。
で、ワンコーラス終わったところで、「あっけらかんのかーアルト」がガラッと雰囲気を変えてしまう。
この瞬間がいいのだ。
たまらん。

ベースとドラムがMJQのパーシー・ヒース、コニー・ケイなのがまたいい。
この二人、MJQでの目立っちゃいけないリズム隊がすっかり身に付き、本作でもけして出しゃばらなかった。
それが一層この異色のセッションを、キャノンボールのアルトを際立たせた。
もしもスコット・ラファロとポール・モチアンだったなら、ゴチャゴチャして収拾付かなかったのではないか。

ビレッジバンガードライブは1961年6月25だった。
あまり関係ないかもしれないけれど、この日は母の30回目の誕生日であった。
私、小学校一年生。
アフタヌーンセット二回、イブニングセット三回、計五回のステージの一部始終が、2002年ビクターからボックスセットで出ている。
ビル・エバンス・トリオによるワルツ・フォー・デビーが、この時イブニングセットの2と3で二回演奏されている。
アルバム収録されたのはセット3(Take 2)の方だ。

ビル・エバンス・トリオによる「ワルツ・フォー・デビー」で、マナーが悪い客以外に唯一気になるのが、この曲の頭でエバンスのピアノとラファロのベースが若干ズレる点だ。
A型気質丸出しだ。
しかし、気になるものは気になる。
このズレはボツテイクの方もたいして違わない。
要するにアイコンタクトでもなく「せーの!」でもなく、適当に(勝手に)エバンスが始めているものと思われる。
二つのテイクで違いがあるとすれば、採用テイクの方がモチアンのブラシにザクザク感というか力強さがあり、ラファロのベースソロにも迫力がある。
しかし、それ以上にTake 1最後の蛇足がボツの決め手だろう。
現在ではボーナストラックとしてCDに収録されていると聞く。
尚この曲、オリン・キープニュースの直筆レコーディング・データでは「Debbie's Waltz」となっている。

キャノンボールセッションはスタジオ録音、ビレッジバンガードの方はライブであるが、私はむしろライブの方が録音が良いと思う。
驚異的な事だ。
そして実は本作、キャノンボールセッションの方が三ヶ月早い。

ベーシストのスコット・ラファロは、ビレッジバンガードライブから10日後に自動車事故で亡くなった。
25歳の若さだった。
大きなショックを受けたとされるエバンスも、結局は1980年に死んだ。
そしてその数年前、エバンスの妻エレインが自殺している。
夫の心変わりを嘆いての事だったという。









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