(233) SHE'S LEAVING HOME

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No.233 2014.11.22



<SHE'S LEAVING HOME>




昔のジャズファンは辛辣な事を言っては素人を威圧したものだった。
そこに若干の諧謔が含まれていたことも否定しない。
でも、やはりその目線は相当上空からのものだった。
ストリングス入りを「ヒモつき」コンガ入りを「チャカポコ」と蔑んだ。
バイオリニストやパーカッション奏者の立場も考えてやったらどうだ。
ジャケットに女性の裸が写れば「エロジャケ」。
これは今でも言うし、私も少し抵抗がある。
娘にでも見られたら、父親の人格を疑われるのではないかと恐れるからだ。
女性ボーカルや女流ピアニストを好めば「婦人科」。
ならば私などは立派な婦人科だ。

本作の「婦人科」関連ボーカリスト、メロディ・ガルドーに関して語られる不可欠の話題をご存じだろう。
彼女がいつも手放す事がないサングラスである。
メロディ・ガルドーは現在29歳だ。
私の娘と殆ど同年代。
十年前、自転車で走行中彼女は事故に遭った。
赤信号を無視して突っ込んできた車に跳ね飛ばされ、死の淵を彷徨いながらもなんとか生還した。
しかしその後遺症のために視覚過敏となり、以来サングラスを離すことが出来なくなったという。
それ故なのだろうか、彼女が作る歌がどこか別の、苦悩に満ちた世界を私に覗かせるのは。

「My One And Only Thril」のThe Rainを聴いた。
その時私は全く無関係な情景を見ていた。
私は何故か「もののけ姫」のシーンを思い出していたのだ。
たたら場の頭エボシがこう言い放つ。
「賢しらに僅かな不運を見せびらかすな」
呪われたアシタカの右腕を指して。
バイオハザードを連想する、あの悍ましくも不気味な右腕が「僅かな不運」か。
苦界に身を売られた過去を持つ彼女にのみ許されるセリフだ。

メロディ・ガルドーもまた不運だった。
僅かとはとても言えないほどに。
だが、メロディ・ガルドーにとって、不運が大々的に語られた事が果たして本意だったろうか。
私は違う気がした。
レコード会社の方針に不本意ながら従ったと私は思う。
サングラスとは関係なく、まさに色眼鏡で見ることなく、彼女の音楽を聴いてほしかったのではないだろうか。
不運の公表とバーターでCDを売りたくない。
彼女の不運と音楽に何の関係もない。
そのことをメロディ・ガルドーは良く知っていたと思う。
だから彼女はそろそろ状況を変え埒を明けたかったのではないか。
第三作、これを聴いて私はホッとしたのである。
不運な事も確かにあったけれど、一人の若い女性としてそろそろ幸せになって良い頃だ。
そうした方向へ少し舵が切られたように私は感じた。
今すぐに全部は無理だとしても。


さて、大幅に話が変わる。
本日車を買い換えたのである。
今まであまり車の話をした事がない。
それは実際、特に私が車好きという事でもないからだ。
だが、買い換えによって近いうちに引き取られていく(ほとんどタダ同然だ)この車が私はとても好きだった。
だから我が家に18年も居つく事になった。

一緒に車のショーに行った友人に薦められてこの車を買った。
この人物はその頃、イタリアのバルケッタを買った。
オープンツーシーターの、それはそれはかっこいい車だった。
その後、左ハンドル且マニュアルのセニックを買い、最近になってカングーに乗り換えるという、なんともラテン系な男である。
日本のパンツェッタ・ジローラモ、北のちょいワルオヤジ。
今は見事にカングーが似合っている。

そんな彼に薦められたこの車、とにかく壊れまくった。
どこがって?そりゃーあなた、エンジンとミッションとボディ以外の全てと言っていいくらいだ。
壊れに壊れ、修理代が恐らくはこの車をもう一台買えるくらいかかったのではないか。
でも私は少しも不満を感じていない。
この車を買って良かった、そう思っている。
気品があり、哲学があり、そして何より佇まいが凛としていた。

徳大寺 有恒氏がこれのゴールドに乗っていらした。
この車が走り去っていく後姿が好きだと言っておられた。
我家では主に家人がこの車を使用して来たので、まさしく走り去る後姿を私は幾度となく見てきた。
いつも典雅で美しかった。
そして数ある外装色の中でも、とりわけ私は我家の色が好きだった。
この車にはこの色しかないだろうというくらいに。

殆どの期間をガレージ保管していたせいもあるだろう、今でも状態が非常にきれいだ。
そのせいかどうか分からない、多分違うような気がするが、18年経ってもひとつもみすぼらしくならなかった。
こんな車を私は他に知らない。

話したいことならいくらでもある。
だがもうよそう。
たくさんの思い出を乗せたまま、彼女はもうすぐ家を出ていくのだ。



レンジ








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こんばんは☆

彼女…ですかぁ(*^^*)
国産の、ただいま大増殖の国産のつまんない彼氏(笑)を連れていかないで、
写真の彼女に会わせてもらえば良かった。
最後にね。
新しい彼女は…どうですか?今度紹介してくださいね(^_-)
今、2枚目を聴いていますよ!
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