(231) SOUL FOOD 魂の糧

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No.231 2014.11.18



<SOUL FOOD 魂の糧>




前世紀末、バカテク認定していたピアニストが三人いた。
モンティ・アレキサンダー、ゴンサロ・ルバルカバ、それに本作のサイラス・チェスナットだ。
バカテクという言い方には少しばかり否定的なニュアンスが含まれる。
テクニックばかりが先走り内容おろそか、といった感じだろうか。

1992年、サイラス・チェスナットは日本のアルファジャズから「キャラバン」でデビューした。
29才だった。
ピアニストとしてもう既に若くない。
その時のベーシスト、クリスチャン・マクブライドなど弱冠19才だったのである。
サイラス・チェスナットに、このチャンスを何とかモノにしようという焦りというか、決意は当然あっただろう。
「スタンダードナンバーを」とのレコード会社の要望も、黙ってのむしかなかったと思う。
であれば違いを見せるならテクニックだ。

2年後アトランティックからオリジナル曲でかためた「Revelation」が出た時、私はこのピアニストがただのバカテクでない事にやっと気付いた。
彼には作曲の才能があった。
例えばホレス・シルバーも数多の名曲を書いた作曲の人だが、ピアノは普通だ。
デューク・ピアソン然り。
楽器の天才且つ作曲の天才、こんな人世の中にそうそういるものではない。

アトランティックで成功したサイラス・チェスナット、同時期に日本のM&Iからも複数のアルバムをリリースしている。
こちらは契約の関係で、「マンハッタン・トリニティ」名義だった。
日本のレコード会社はジャズと言えば反射的に「マンハッタン」である。
しかも相変わらず「スタンダードナンバーを」。
だが、サイラス・チェスナットはテクニックのひけらかしをしなかった。
もう彼にそんな必要などなかったのだ。

余裕が演奏すら変えてしまう。
でも一番変わったのは体型かもしれない。
「100 Gold Fingers」という人気ピアニスト10人を集める企画で来日した時、病的にメタボ化した姿を見て大変驚いた。
このコンサートに付いたコピー、「ニューヨークからピアニストが消えた」にも笑ったけど。

本作タイトル曲を聴いて欲しい。
これは是非聴いておきたい一曲だ。
9分近い長尺にも関わらず、飽きさせることなく一気に聴かせる。
フロントにマーカス・プリンタップ(tp)やジェームス・カーター(ts)らを並べ、既にビッグネームとなっていたデビュー盤のベーシスト、クリスチャン・マクブライドが付き合っている。












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