(202) ジャズとジャケット

fhilly joe
No.202 2014.9.29



<ジャズとジャケット>




ジャズのジャケットデザインはシンプルなものが多い。
基本は録音中のミュージシャのスナップショットや、風景写真、イラストなどがベースとなる。
精々休憩時間にミュージシャンを連れ出し、近所で軽くポーズをとらせる程度だ。
最近でこそ、まったく無関係なお姉さんやらヌード写真やらを使用する例も少なくないのだが、昔はそういったものをお見掛けする事もあまりなかった。
いずれにしても低予算で、手間暇掛けずにチャッチャとやるのが普通だったのだ。

一つには一作当たりの販売数が少ないというのがあるだろう。
ブルーノート、プレステッジ、そして本作のリバーサイドをジャズ三大レーベルなどと称するが、当時の実状はチンケなマイナーレーベルに過ぎず、オリジナル盤発売当時の実売総数は千の単位が普通ではなかったか。
あの「クール・ストラッティン」などは千いっていない可能性がある。
だからオリジナル盤が狂ったような金額で取引きされるのだ。
予想される総売上が少ない以上、ジャケットデザインに割ける予算も限られる。
勢いジャズは数で稼ごうという話になる。
何しろやろうと思えば、午前中に一枚午後一枚と、一日に二枚分の録音が可能な音楽なのだ。
例えばロック系のミュージシャンが、一枚出すのに年単位の時間を要したのと大きく異なる。
そのような事情からジャズのレコードというのは膨大な点数になり、老舗ジャズ喫茶のレコード棚に何万枚といったアルバムが蒐集されることにもなる訳だ。

もう一つはイメージの問題。
あまりおちゃらけたものはどうも似合わない。
そのように作る方も買う方も思っている。
ブルージーでどちらかと言えば薄暗く、内省的なイメージ。
だからジャケットに写るミュージシャンはニコリともしないものが多い。
そんなことから、No.188の最後に掲載したロリンズのジャケット写真が、仲間内で散々おちょくられもしたのだ。
だから本作なども非常に珍しい方だと思う。
類似のものとしては、サンタに扮したデューク・ピアソンの「メリー・オウル・ソウル」くらいしか他に思いつかない。
実際にはロリンズもピアソンも、本作のフィリー・ジョー・ジョーンズも、きっと大層ノリのいい人物で、こちらの方が地であってブルージーで薄暗く内省的な方は演技で営業ではないか。

あの「リリシズム」で名高いビル・エバンスが、モニカ・ゼタールンドの歌伴を務めた盤がある。
その名も「ワルツ・フォー・デビー」である。
この作品のCD化に際し、ラストに追加された能天気な「サンタが町にやって来る」を聴いた時、私はジャズメンの本性を見た気がした。
エバンスは生前、この短い録音が後日世に出るとは考えていなかったのではないか。
エバンスの実像に迫る貴重な記録である。

フィリー・ジョーの方は、本作ジャケットでこんな格好をしたばかりでなく、ドラキュラに扮したナレーションまでしている。
残念ながら私は英語を解さず、何を言っているものやら殆どわからないが、「バンパイア」とか「ドラキュラ」といった単語が、芝居がかったナレーションの中に聞き取れるので多分そうだ。
元はと言えば本作サイド出演のジョニー・グリフィン(ts)作のブルースナンバー、「ブルース・フォー・ドラキュラ」に端を発した(企画が先の可能性もあるが)悪ノリに過ぎず、作品の内容はと言えば、それら(ジャケットとナレーション)を除けば至極真っ当なハード・バップ集である。

フィリー・ジョーの件、続きを次回また。






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Re: ジャケ絵

MKさん、おはようございます。

ブルース・エットといえば「FIVE SPOT AFTER DARK」ですね。
この曲を書いたベニー・ゴルソンはホント大した天才でした。
彼が書いた数々の名曲もさることながら、アレンジがまた凄いですね。
アンサンブルの一音目で鳥肌が立ちます。

ジャケ絵

モニカ・ゼタールンドの唄のバックで奏するビル・エバンストリオのワルツフォー・デイビーの映像をYoutubeで見つけ、それ以来ブックマークを付けてあります。
ジャケ絵で好きなのは、カーティス・フラーの『ブルース・エット』です。
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