(183) 似て非なるを悪まず

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NO.183 2014.9.4



<似て非なるを悪まず>




錦織選手には驚いた。
USオープンでベスト8が限界であろうと見ていたところ次も勝ち、ベスト4へ進んだではないか。
グランドスラムの男子シングルスは5セットマッチだ。
錦織圭はいつもこれに泣かされてきた。
上位シードを破っても、たいていはもつれにもつれ、フルセットでの辛勝となり、次の試合はもう体力的にもたなかった。
私は約20年シングルスの大会に出ていない。
5セットを戦ったこともない。
でも5セットのシングルスの過酷さが少しはわかる。
年齢にもよるが、それなりのトレーニングをしていなければ、普通1セットか2セットで脚がつる。
この場合の「つる」とは、ちょっと伸ばせばまた出来るなどといった生易しいものではなく、一週間はまともに歩けなくなるといった類のものだ。
むしろ脚がつるくらいならまだマシであり、肉離れやアキレス腱断裂も普通に発生する。
この30年間で二度、アキレス腱断裂の現場に居合わせた。
コートの向こう側で起きても、「バチッ」と何かが切れる音が聞こえてくる。

プロの選手は素質も鍛え方も違うから、1セットや2セットでどうこうなる事など滅多にないが、やはり同じ人間だ。
5セットマッチのフルセットが連日続けば、やはりダメージが蓄積するだろう。
それを乗り越える体力のある者だけが、グランドスラムを征してきたのだ。
錦織選手、センスは元々素晴らしいものを備えている。
エアーKはアントニオ猪木の卍固めに匹敵する発明である。
だが、唯一体力面だけが世界のトップレベルに達していなかった。
だからグランドスラム大会が3セットマッチに変更されない限り、錦織選手の優勝はないだろうと思っていた。
だが、もしかしたら彼は変わったのかもしれない。
彼の身体は、と言うべきか。

似て非なる者とは錦織圭のことでは無論なく私だ。
同じようなウエアを着、同じようなラケットを持ち、同じようなコートで球を打ってはいるが、当然ながら内容は笑うほど異なる。
まず何が違うと言って、ラケットの握り方が違う。
私のは昔のテニスだから、コンチネンタルグリップという「超うすーい」握り。
いまどきの選手はウエスタングリップ等の厚い握りで、「グリグリの」トップスピンを打つ。
そうしたものを見た時実は私、正直に言うとバカに見えて仕方がない。
違う競技にしか見えないし、少しもかっこよく思えない。
いや、ごめんなさい。
もちろん好きなようにやって頂いて結構なんですよ。
勝ちゃーいいんだテニスは。

ただ、ちょっと考えたい。
テニスのこうした変化が、この競技にとってプラスに作用したであろうか。
プロの世界にあってはセンスの戦いを馬鹿力の勝負に置き換えた。
原動力となったのは道具、ラケットの進化だ。
かつて使用されていた木製の小さなラケットであんな事をしたところで、とてもまともに当たるものではない。
アマチュアの世界ではオバチャンをコートに蔓延らせた。
どんくさいオバチャンであるが時間だけはある。
何故なら自分には働く必要がないからだ。
働くのは夫であり、家事は限りなく軽労働となった。
余りある時間を利して高性能ラケットで練習を重ねるオバチャン。
小さい木製ラケットのままだったら手も足もでなかっただろう。
だが、スィートスポットの広大な今どきのラケットなら、当てただけで勝手に球は飛んでいく。
あとは愚直に練習さえすれば、もはや若い女(なにかと忙しい)など敵ではない。
悪貨が良貨を駆逐する如く、やがてテニスコートから若い女性が姿を消した。
若い女性がいないところに、若い男は用はない。
こうしてテニスの衰退が進行した。
道具の進化は必ずしもその競技の繁栄を担保しない。
今、街のテニススクールは高齢化が進み、限界集落化しようとしている。

さて本作ポンタボックスである。
これは限りなくジャズに近い、何か違う別のものだ。
村上ポンタ秀一は日本を代表するセッションドラマーだ。
あの「赤い鳥」のメンバーだったこともある有名人。
そんな彼がちょっとジャズっぽいものもやってみようと思ったのだろう。
だが、基本的な音がジャズのドラムとは異なる。
ジャズとロックその他では使う楽器(ドラム)の形状がそもそも違う。
素人の私が見てもそれは明らかで、ジャズのドラムは見るからに小ぢんまりとしたものだ。
本作で使用した楽器は多分、そうしたものではあるまい。
あるいはチューニングがロック的なのかもしれない。
そして何というか奏法そのものが違うようだ。
かと言って村上ポンタ秀一のドラムが同世代と思われるセッションドラマーの、例えばジム・ケルトナーやスティーヴ・ガッドの匂いがするかというとそれもない。
独特の世界なのだ。
何やら和太鼓の響きすら感じるのは、タムを多用するせいだろうか。

村上ポンタ秀一自身がジャズを演っているつもりはない的な発言をしていた。
なにしろこんなタイトルのアルバムを出してもいる。
「Modern Juzz(Jazzにあらず)」
ちょっとあざといね。



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Re: No title

ホセ・メンドクサーサ 殿

こんにちは。

有り体に言ってカラダによくないスポーツです。
あちこち故障します。
プロの選手を見てください。
利き腕だけが異様に太いのがわかります。
ジュニア時代から長年やるとあんな事に。

身体のためなら、もっと他にずっと良いのがある。
でも球がラケットの真ん中に当たる快感が忘れられなくなる。
一種の中毒と言って良いでしょう。

No title

テニスの世界ってそんなに過酷なんですね(汗)
知らなかったです。
試合時間が異常に長いスポーツだなあ、とは以前から思ってましたが・・・
これで、テニスをもっと楽しんで違う視点からも観れます
良い知識をありがとうございます(^^)
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