(163) DEEP NORTH

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NO.163 2014.7.17



<DEEP NORTH>



トランペッター島裕介のもう一つの顔。
それがこの「Shima&ShikouDUO」である。
正直言って驚いた。
彼の「作曲力」に。
本作の大半が島さんのオリジナルである。
そのどれもが、歌詞をつければ即歌になるといった、非常にメロディアスな作品だ。
「名曲を吹く」の「Ink Blue Rhapsody」がそうした曲であったが、一曲だけ気まぐれに書いたものかもしれなかった。
だが、そうではなく、島さんはその道で十分やっていけるくらい作曲の人だったのだ。
本作の「クラブ R」や「海を見下ろして」など、それなりの歌詞をつければ歌謡曲として間違いなくヒットしそうだ。
それらの曲は「平成歌謡」として、きっと長く歌い継がれる名曲になるだろう。
いや、私が知らないだけで、実際既にそういう事になっているのかもしれない。
これは困った。
何も私が困ることはないのだが、益々島さんという人が分からなくなってきた。

色々調べているうちに、彼の年齢がわかったのである。
なんかもう、ストーカーだな。
島裕介、1975年生まれであった。
丁度私と20違う。
私がやっと成人となったあの頃、彼は生まれたのか。
これは重要なヒントだ。
その時、ビートルズ解散は言うに及ばず、彼が物心つく頃にはイーグルスすら解散していた。
しかし、彼は私とは比較にならない量の音楽情報に囲まれて育った筈だ。
音楽はもう特別なものではなく、日本人の生活に完全に溶け込んでもいたと思う。
だが、ジャズの光明は遥か彼方に後退していた。
そんな時代に、どのような経緯でトランペットを手にしたのだろう。
わからない、想像するしかないが、「スィングガールズ」のようなストーリーが彼にもきっとあるに違いない。
少年島裕介は何かのきっかけで、ギターではなくトランペットを始め、その音に魅せられた。
いろんなトランペッターを片っ端から聴いたことだろう。
そういう事が難しくない時代になっていた。

そして高校生になる頃、マイルス・ディビスが死んだ。
横浜「ちぐさ」で彼はこんな事を言っていた。
「ホレス・シルバーは偉大です。マイルスよりずっとね」
何故ピアニストのシルバーとマイルスを比較するのか、そして自分と同じトランペッターのマイルスの評価が何故シルバーの下なのか、その時私にはわからなかった。
「Silent Jazz Case」において彼は、明らかにマイルスを意識した曲をやっている。
また、他のアルバムでも、マイルスの代名詞であるミュートを結構な頻度で使用してもいる。
それでもマイルスは、彼にとってシルバーより下なのだ。
キーワードはきっと「作曲」だ。
マイルスも良い曲をたくさん書いた。
しかし、シルバーはその点ではマイルスを上回ったと言えるかもしれない。
特に島さんにとってはそうなのだろう。
彼の音楽の中で作曲が占める比重は相当重いようだ。
私は最初、彼のトランペットの音にやられた。
だが今、島裕介がただのトランペッターで終わってはあまりに惜しいと思い始めている。
なにより、誰よりも本人がそう思っているのではないか。
これは更に、他の作品も聴いてみなくてはなるまい。
私はあせってamazonを漁った。
現在入手可能な作品はもう、あと二つしかなかった。









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