番外編 ㉒ まいりました

paul 2x2



<番外編 ㉒ まいりました>



2014年5月21日、およそ半世紀ぶりにポール・マッカートニーが武道館に帰ってくる。
そのほとんど法外と言っても過言ではなかろうという料金のコンサートチケットが見事に外れた。
自分の応募分はデカデカと赤字で「落選」。
正直に言う。
それを見た時、残念ではあるがほんの少し安堵のニュアンスが心の奥の方に浮かんだのは事実だ。
特段常識人だと思ったことはない。
むしろあんたは逆だ、と言われたら反論のしようもないのであるが、そんな私から見ても、大箱コンサートのチケットが10万円というのはマトモではない。
ディナーショーならあるかもしれない。
でも武道館だぞ。
行ったことはないが、アリーナ席と言っても後ろの方だったらステージなんか見えるものではないだろう。
終始スクリーンに映るポールを見ることになる。
ありえないくらいコスパが低いコンサートだ。

それでも私は行こうと思った。
半世紀前の武道館は、北国の小学生だった私には手も足も出ない天空の城だった。
私にはまったくと言って良いほど成す術もなかった。
そうしてビートルズは私を置き去りにしたまま、どんどん先へ行ってしまった。
行き着く処まで行ったのか、あるいは飽きてしまったのか、彼らはコンサート活動を止めると言い出していた。
その間、私の時計は遅々として進まなかったが、やっとのことで高校生になり、大学生になる頃遂に彼らは解散した。
その頃には私の音楽への関心も、次第にビートルズ的なものを離れジャズへ向かっていた。
私はジャズ喫茶でアルバイトを始めていた。
そうこうするうちにジョンが殺され、そのニュースを私は酒屋のカウンターで聞いたのだった。
驚き悲しんだが涙は出なかった。
一杯の酒でビートルズを飲み込み、私はおっさんになっていった。
そして21世紀が来る頃にはジョージが死んだ。
時間はもう、あまり残されてはいないようだ。

よし、行こう、武道館へ。
行くなら今だ。
それに、なんとなく行けそうな気がしたのである。
なんと言っても東京(国立)と大阪(長居)の間に、中二日の過密日程で急遽はめ込んだ追加公演だ。
金額も金額である。
可能性は低くないような気がした。
そして平日15時開演というのも味方するような気がした。
だが、すべてあまかった。
ビートルズ人気健在、ポール・マッカートニー恐るべし、そして侮り難きは団塊世代の諸先輩方。
まいりました。

飛行機も予約した。
ホテルも手配した。
しかし、行けないものは仕方ない。
全部キャンセルだ。
残念過ぎるので本作を購入し妻と観た。
2009年のニューヨーク公演の記録である。
CDが二枚、DVDが二枚入っていた。
私が買ったのは輸入盤で、2400円だ。
くどいようだがディスク4枚で2400円。
なんという安さか。
10万円のチケットと比べたら、(比べてどうなるものでもないが)タダ同然と言って良い。
そして、悔し紛れに言うのではないが(ホントに?)、これで十分だったのかもしれない。

それにしてもポールという男、どうしてこんなに元気なんだろう。
この時既に70近いというのに、2時間以上弾きっぱなしの歌いっぱなし。
その立ち振る舞い若々しく、
若いモンにまったく負けてなどおらん。
いるんだよね、こういう人が。

これはお買い得です。
録音極めて良好。
ただ、取り扱いには注意。
涙腺破壊盤だ。

おひとりの時にハンカチ用意してこっそりどうぞ。




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