番外編 ⑳ 宝物(ほうもつ)

鏡



<番外編 ⑳ 宝物(ほうもつ)>



知人が肝機能障害で緊急入院となった。
酒など一滴も飲まない男だ。
驚いて急ぎ見舞いに行ったのだが、手ぶらというわけにもいかず、途中で本屋に寄った。
「ビートルズの幽霊」と「テニスマガジン6月号」を買った。
そして自分用についでに買ったのが「聴く鏡Ⅱ」。
ジャズ喫茶「ベイシー」の菅原正二さんが、「Stereo Sound」に25年間連載中の文章を単行本化したものだ。
「聴く鏡Ⅱ」というからには普通「Ⅰ」もある。
こちらは2006年に出ている。
そして、「Ⅰ」の前の「初号機」に当たる「ジャズ喫茶ベイシーの選択」がある。
この巻と「ぼくとジムランの酒とバラの日々」とは同一内容であるから、一応注意を要する。
両方買うのは勝手だが。
ちなみにジムランとはジェームス(J)・バロー(B)・ランシング(L)の略で、おわかりだと思うがJBLの創業者の事だ。
昔の人はJBLをジムランと言った。
今はもう言わない。
ところでレシートを見たところ、この300ページに過ぎない単行本は2700円とかなり高めだ。
400ページを越える「ビートルズの幽霊」が1600円だから、本は目方で売買するものではないが、この本のポジションが見える。
そんなに売れるわけはない、と出版元が考えているのだろう。
それともむしろ逆でステレオサウンド社、菅原さんで一息つきたいか。
何れにせよ、仮にもジャズファンだオーディオマニアだというのであれば、これらは読んでおきたい。

「趣味は面倒なものに限る」
菅原さんはそのように仰る。
なぜなら
「面倒は愉しみを持続させ、楽はアクビをさそうだけだから」
だそうだ。
良い音が出ない時、菅原さんの言葉に実は幾度も励まされた。
販売店に任せきりの「良い音」に価値などないんだと。
そんなものは趣味とは言わないんだと。
(本心を言えば任せきりでいいから良い音が出て欲しかったが・・・)

見る鏡には自分の姿が映る。
他人の目で自分を見たことがないので断言しかねるが、きっとそっくりなモノが鏡には映っている筈だ。
それを虚像と言う。
大陸から鏡が入ってきた当時の倭人は相当驚いたことだろう。
そして鏡は宝物として大切にされた。
聴く鏡にはそっくりな音楽の虚像が映る。
虚像はそっくりであればあるほど良い。
よりそっくりであるようにと、オーディオマニアは血道を上げる。
いつわりの姿と知りながら。
虚像だがただの虚像ではないのである。
からっぽで中身は何もないむなしいものだ、などとは金輪際思っていない。
音楽を映し出す「聴く鏡」は私の大切な宝物だ。












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