(130) ラジオの日々

ビター
NO.130 2014.3.12



<ラジオの日々>





ビタースィートサンバ。
ハーブ・アルパートとティファナブラスである。
我々の世代なら誰でも一度は聴いたことがあると思う。
この曲は、有名なラジオの深夜放送のオープニングナンバーだった。
特別真剣に勉強していた訳でもないのに、日付が変わるまで起きていて、ラジオだけは真剣に聴いていた。
そのことで世界と何か繋がりが持てたような気がしていた。
そしてラジオを通して、電波の向こうにある世間というものを覗き見ていた。
それが後日の何か役に立ったかどうか、それはわからない。
だが、一生記憶に残る何曲かの音楽との出会いがあった。
ラジオはほとんど唯一の音楽的情報源だった。
しかし残念なことにまるごと一曲かかることはなく、しかも最後の方はCMが被さったりするのだった。

ラジオと言えばAM放送であり、NHKのFM放送が始まったのは高校生になってからだ。
伯父に買ってもらったステレオセットで聴くNHK-FMは何故かノイズまみれで、ディスクジョッキーの生硬な語り口がリスナーをしらけさせた。
かかる曲の多くがクラシックだったこともあって、FMはほとんど聴くことがなかった。
後年ステレオのコンポを自力で購入した際に、テクニクス(ナショナル、現パナソニック)のFMチューナーを導入したのだが、付属のフィーダー線アンテナで受信するFM放送にはやはりノイズが混入していた。
そこで私は5素子の巨大なFMアンテナを下宿の窓の鉄柵に設置したのである。
このことにより、鮮明なFM放送の受信が可能となった。
NHK-FMでは相変わらず「夕べのクラシック」やら「今日の邦楽(歌謡曲にあらず)」やらを放送していたが、当時住んでいた関西には民放のFM大阪があり、音楽主体の番組が多くあった。
それもジャズを含むポップス音楽を、たいていはハショルことなく終わりまでかけるのである。
「FMレコパル」や「FMファン」といった専門誌があり、相当前から番組表が出ていた。
中にはレコード発売前の新譜、それも売れ筋をまるごと放送するような番組すらあった。
レコードの売り上げに影響しないのだろうか。
気に入ったら買ってくれという事だろうか。
だが私は余程のことでもない限りレコード購入にまで至ることはなく、とにかく有難いことこの上なしな番組であった。

その太っ腹ぶりに歓んだ私は、片っ端からカセットデッキでそれらを録音した。
LPレコードをどんどん買うような力はまだなかった。
しかしカセットテープならその十分の一の投資で済むのだ。
そして万一気に入らなければ、別の曲に差し替えることだって可能である。
そうこうするうちに、カセットテープのコレクションは膨大な分量になり、それらのほとんどが今でも手元にある。
その中にストーンズの特集を録音したテープが数本あるが、これにはまいった。
大阪は日本橋のちょっと怪しい電気店で買ったフジフィルムのカセットテープで、非常に安かったので私は大量にこれを購入した。
こいつは一応録音も出来て再生も可能なのだが、片面をかけ終わるころ、テープの磁性体がヘッド(読み取り装置)にべったり付着して異音が鳴りだす代物だった。
要するに偽物をつかまされたのだ。
今のことは知らないが、大阪とはそうしたところのある街だった。
もっとも怪しげなのは大阪に限らない。
京都のある大学の教授が河原町で買ったジャケットのボタンは糸で縫い付けられておらず、あろう事か糊で貼ってあったという。
ジャケットのボタンをとめる習慣がない彼は、数年後何かの都合でとめたときにはじめて気付いたのだとか。
もう時効であると笑っていた。

ところで当時私の身近にはテレビというものがなく、10年ほどの間テレビからの情報が途絶しているため、普通の日本人なら当然知っているような常識を知らない場合がある。
もっともそれらはどうでもいいような話なので、たいていそれ程困りはしない。
ラジオの深夜放送というものがまだ存在しているのかどうか知らない。
だが、まだやっていたとしても、私はもうそれを聴くことはまずないだろう。
何しろ夜は九時頃に寝てしまうものですから。











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