(280) New Jazz

straight ahead 1
No.280 2015.4.2



<New Jazz>





創業者ボブ・ワインストックが去って間もなく、プレステッジ・レコードは傍系のNew Jazzをスタートさせた。
あまりにもレコードの売れ行きが悪く、多角化に活路を求めたものと思われる。

エリック・ドルフィーが「Outward Bound」でデビューしたのはこのレーベルであった。
確かに少しは新しかったのだ。
しかし、ロイ・ヘインズ(ds)フィニアス・ニュー・ボーン(p)ポール・チェンバース(b)のトリオ作「We Three」や、ケニー・ドーハム(tp)「Quiet Kenny」なんかは、新しき革袋に古い酒を盛っただけだった。
そんなやり方で売れるなら世話もないが、なかなかそうはいかないだろう。

本作はあの名作ブルースの真実収録の直後、1961年3月に録音されている。
オリバー・ネルソンとエリック・ドルフィーの共演はそういう流れだ。
両作ともバンゲルダー録音だから聴き比べてみるのも悪くないけれど、まあ率直に言って格が違うので同列に語るものではない。
とはいえ本作は本作で美点があり、特にミルト・ジャクソン作の「Ralph's New Blues」で始まるB面が好きだ。
この曲を除くすべてがネルソンのオリジナルである。
ラストの「111-44」は名曲だ。

オリバー・ネルソンは作編曲で多くの良い仕事を残した。
本作にエリック・ドルフィーを呼んだのも、プレーヤーよりもコンポーザーの自覚が勝っていたからだと思う。
ドルフィーとの共演がどうなるかなんて、彼には端から判っていた筈だからだ。
「ラストワルツ」のロビー・ロバートソンを思い出した。
エリック・クラプトンをザ・バンド解散コンサートのゲストに迎え、ロビー・ロバートソンは嬉しそうだった。
たとえギターで差をつけられても、彼の音楽全体が戦力アップするならそれで良かったのだ。

本作におけるネルソンとドルフィーにバトル意識があっただろうか。
それはないと私は思う。
むしろそれぞれ自分の役割を冷静にこなしている感じすら伝わってくる。
ドルフィーは自分が何故呼ばれたかを、つまり雇われた理由を理解していた。
彼の演奏はいつも激しい。
しかしそれは緻密に構成されたものだ。
ドルフィーは自分の音を客観視出来る「音楽家」だった。
ネルソンがドルフィーを呼んだ理由もそこにある。

二人ともがマルチリード奏者であり、アルト、テナー、バスクラ、フルートと目まぐるしく持ち替えが行われる。
「ブルースの真実」における四管編成の再現が、アレンジャーたるオリバー・ネルソンの本来希望するところであったろうか。
予算の都合で却下され、苦肉の策でこうなったというのが真相かもしれない。




今年も春が来て、親子温泉旅行の季節となった。
母は84歳になる。
さすがに少し怪しくなってきて、道中同じことを何度も話題にする。
私は初めて聞くフリをするのが上手くなってきた。

段々行き先がなくなってきたのである。
そろそろ二巡目に入るのが良さそうだと思った。
今回は白老のオーベルジュを当てずっぽうに予約したのだが行ってびっくり。



白老1



この日の客は我々三人だけ。
怖いですよ、なんだか・・・





白老3




二部屋用意され、私だけ一人で寝る事に。
夜中にちょっと部屋を出たらオートロックで戻れなくなった。
泣きそうだ。
私ホラー映画が嫌い。
バイオ・ハザードなんかやるんじゃなかったと、この時ばかりは後悔した。









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ジャンル : 音楽

(281) JAZZLAND

the mode 1
No.281 2015.4.6



<JAZZLAND>





リバーサイドの傍系レーベル「JAZZLAND」に残されたソニー・レッド(as)のリーダー盤「The Mode」である。
ジャズのモードと聞くだけで逃げ出したくなるが、ほぼ正統派ハードバップだから安心していい。

思えばジャズメンに「ソニー」が大勢いた。
ソニー・ロリンズ(ts)ソニー・クラーク(p)ソニー・クリス(as)ソニー・スティット(ts)彼らのうち誰一人本名がソニーという者はない。
ソニー(sonny)は少年への呼びかけで「坊や」というほどの意味に用いられる愛称だからだ。
事実ソニー・レッドも本名をシルベスター・カイナーといった。
しかし「sonny」ほどジャズっぽい名前もまたとない。
(シルベスターではジャズというより「ロッキーのテーマ」になってしまう)
無論それは多くのビッグネームが残したイメージによるものだ。
そうした中で本作のソニー・レッドは最もアンダーレイテッドな「ソニー」と言っていいだろう。
同じくJAZZLANDレーベルに残り二枚のリーダー作がある他は、ブルーノート4032番「out of the BLUE」があるくらいだ。
アルフレッド・ライオンが「バードランド」に出たソニー・レッドを聴き即座にレコード化を決めたというが、何故か後が続かなかった。

ソニー・レッドは手練れである。
しかしブラインドで当てるのは相当困難ではないだろうか。
ともすればジャッキー・マクリーンと混同してしまいそうだ。
音色が似ているのである。
これがソニー・レッドがビッグネームに成り切れなかった最大の理由ではないかと思っている。
ジャッキー・マクリーンは一人でいい。

本作は冒頭「ムーン・リバー」で始まる。
非常にキャッチーであり分かり易い。
これは意図的なものだろう。
しかしジャズ喫茶人気盤のセオリーを守っているようなのに、そうした話を聞いたことがない。。
ジャケットのせいもあるかもしれないが、さすがに「ムーン・リバー」ではアホ過ぎた。
グラント・グリーン(g)とバリー・ハリス(p)の支配率が高すぎるのも一因か。
尚ワンホーンのトラックではシダー・ウォルトンがピアノを弾いている。

ところで日本が世界に誇る(もはや過去形か)ソニーの社名もSONNY由来であるという。
そもそもは東京通信工業といった。
創業者の井深大氏か盛田昭夫氏がジャズファンであった可能性はある。
弟がソニー株を少し持っているのだが、今や無配であると嘆いていた。
前にも言った気がするけれど、「Lカセット」やビデオの「β」、最近ではMDの早すぎる陳腐化など過去にも失敗はあった。
だが何といってもCDを発明したソニーである。
今や電器屋と言うより金融業に近いというが、何とか持ち直してくれないかと思っている。
弟の老後のためにも。

まだスノーボードとかいう「はんかくさい」ものが出現する前、今では信じられないほどスキーヤーが溢れていた頃のゲレンデで、長蛇のリフト待ちをする人々の多くがウォークマンを聴いていた。
残念ながら当時の私には手が出なかった。











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(282) blue note

bluehour.jpg
No.282 2015.4.9



<blue Note>





アルフレッド・ライオンはブルーノートの傍系レーベルを作らなかった。
真意はわからない。
だが彼はそんな事をしたところで売れないものは売れないと知っていたような気がする。

ライオンは妥協をしなかった。
当然限界というものはあっただろう。
妥協を拒めば手間も暇も金もかかるのだから。
しかし彼はいつだって出来る限りの事をしたのだと思う。
だからこそブルーノート作品は当時にあって最も完成度が高いのだ。
レコーディング前にリハーサルを行い、しかもそれにすらギャラを払ったのはブルーノートだけだった。
そうした行き方が本当にジャズ的であるかどうか、私はそんな事はどうでもいいと思っている。
残された音楽の質、それだけがすべてだからだ。

もちろんブルーノート作品のみ質が高いなどと言う心算も毛頭ない。
だが妥協を排さず最善すら求めない横着者が、クオリティの高い製品を安定供給する事など出来るわけがないのも事実である。
言うまでもないことだ。
そんなことは少しでも実社会で仕事をした事があれば誰でも知っている。
そして品質の良い仕事(音楽)だけが風雪に耐え容赦ない風化を免れ得る。
これも事実だと思う。

最善を尽くさず尚且つ偶然(言い換えればマグレ)が作用しなかったレコードは、歯槽膿漏で失われる歯のように時代からも記憶からも抜け落ち、もう誰も顧みることがない。
何れにせよ歯はよく磨いたほうがいい。
普通動物は歯を失えばおしまい、生きていけない。
万一の時、人間には歯医者という所があるが、これは出来れば一生行きたくない類のものだ。
出来るだけ自力でメンテしたい。
だからここ2年くらい、私は音波歯ブラシというのを使用するようになった。
これはいいよ。
歯がいつもツルツルだ。
よく磨きその上で年一回くらいはイヤイヤ検診に行く。
これで一生もてばいいけど。
それでも歯周病とやらで歯を失うかもしれない。
その時は最近流行りのインプラントかな。
妻がこれで歯を取り戻した。
口の中に車一台分かかったらしい。
テニスの草大会なんかで「コンソレーション」という制度があり、
敗退した選手にもう一度チャンスを与える、というものだ。
これを「はいしゃ復活」という・・・
長くて下らなくてその上わかり辛い話でどうもすみません。


本作4057番がブルーノートレコードを代表する盤かどうか、それは人それぞれ好きに判断すればいいだろう。
だが少なくとも非常にブルーノートらしい一枚であると私は思う。
ザ・スリーサウンズという看板レギュラートリオをバックに、男一匹タレンタインがワンホーンで、これ以上あるかというくらいブルージーにテナーを鳴らす。
さあこれでどうだ!と。
ジーン・ハリスのピアノがこれまたぴったりハマった。

タレンタインに関しては、後年のCTI作品なんかよりずっと本作が好きだ。
演歌調だって?
いいじゃないか。
演歌で何が悪い。
だいたいタレンタインもスリーサウンズも、この国では冷遇され過ぎだった。
音楽は嗜好品である。
一切理屈抜き。
世の中いろんなフェチがいるものだ。
あなたにもあるでしょう、人に言えないようなコトのひとつやふたつ。
私にもある。
人に言えないようなコトは言えないけれど、
ブルーノートやっぱりいい。

本作は1960年の録音だ。
実はここ三回紹介してきた三つの作品はどれも同じ頃に録音されている。
どうだろう、なんとなく其々レーベルのポリシーが垣間見えないだろうか。
まあ、かなりバイアスのかかった、しかも乱暴な話ではあるけれど。

ところでブルーノートというのは、ある特定の「音」を意味した筈だった。
ブルーノートスケールというブルースに用いる音階があり、確かそれはCのブルースなら「ド・レ・ミ♭・ファ・ソ・シ♭・ド」であり、この時のミ♭とシ♭をブルーノートと言うのではなかっただろうか。
昔ギターを練習していた時のあやしい知識で、その後30年ギターなど触ったこともない男のいい加減な話であるから、申し訳ないけどまったくあてにはならない。
それがどうしたなんて言われれば相当困る。

全国にご当地○×ブルーノートがあった。
今でもかなり残っている。
青森にもあったし台北にすらあった。
ブルーノートレコードが商標登録していれば立派な知的所有権侵害だが、そういう(抗議が来たという)話を聞いたことがないので、登録していないかあるいは出来ないか太っ腹なのかの何れかであろう。
もっとも日本における「本家」ブルーノート東京なんてものは、恥入り末席で小さくなっているべき新参者に過ぎない。
京都にもブルーノートがあるが、私が学生の頃既に老舗扱いだった。
おそらく半世紀以上の歴史があるに違いない。
それでもあの町では新しい店なんだろうけれど。
京都に行く機会があれば、また訪ねてみようと思う。







bluenote kyoto










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(283) FLY WITH THE WIND

fly with the wind
No.283 2015.4.12



<FLY WITH THE WIND>





風と翔べ!
本作がバイト先の店に新譜として送られて来た1976年、ゴキブリが這いまわる薄暗いカウンターの内側で、私はマッコイ・タイナーのメッセージを受け取った。
そうだ、風にのって空を翔べ!
そんな所で何をやっているんだ、おまえは。
血が沸いた。
目頭が熱くなった。
ジャズを聴いてこの時ほど感動したことはない。
ジャズはいつだって少しシュールで常に冷静であり続けようともし、だから受ける衝動はいつも厚目のオブラートに包まれているのだった。
噛みしめてやっと滋味が染み出て来るのが普通だと信じていた。
だからそこへいきなり、こんなド直球を投げ込まれたらどうにかなるのも無理はない。
私は思い切りヨガった。

20年後ある廃盤店で「ECHOES OF A FRIEND」を買ったら、毒舌屋のオヤジが言った。
「へ~今時マッコイが売れるとはな」
自分が売っておいて凄いじゃないか。
多分オヤジはコルトレーンが好きではないのだろうと思った。
だからどうしてもその弟子のイメージしかないマッコイ・タイナーを悪く言いたかった可能性がある。
コルトレーンを声高に批判するのは商売柄憚られるからだ。

もっともこの盤は作風がだいぶ違う。
「ECHOES OF A FRIEND」はマッコイのソロピアノ集であり、師であり友であったコルトレーンに捧げられている。
そのジャケットには新約聖書「マタイの福音」から次の言葉が引用されていた。
「Many are called,But few are chosen」
第22章14節である。
招かれる者多く、選ばれし者少なし。
これだけでは何のことやらわからない。
キリストが天国を王の饗宴に例えて言った言葉であるという。
ある王が多くの人々を宴に招いたが来ないので、兵を送り焼き払って滅ぼし、かわりに他の人々を集めさせる。
その場で礼服を纏わない者を見咎め、この男の手足を縛り暗闇に放り出せと命じる。
そのあとに続くのがマッコイの引用「招かれる者多く、選ばれし者少なし」だ。
更にわからなくなる。
何なんだろうね、これは。
私にはどう解釈したら良いのか、マッコイのソロピアノも含めまったく分からなかった。
廃盤屋のオヤジはそれを見越し、この盤を買おうとした私を止めたのか?

本作の大規模な編成や疾走感や爽快感に私は圧倒された。
そしてその数年前、彼が同じレーベルにこんなモノを残しているとはまったく思わなかった。
宗教の持つ力の根源は巧妙な脅しにあり、そのドクトリンはたいてい死の恐怖につけ込む支配だ。
だから金が集まる。
だが信教の自由を私は否定するものではない。
まさしく自由。
毒ガス撒いたり人様の首を斬ったりして迷惑かけないなら、どうぞ好きにしてもらって構わない。
だが、ジャズに宗教を持ち込むのだけは止めてもらいたい。
「ECHOES OF A FRIEND」は、マッコイ・タイナーをどうしても探究したい人以外に私はあまり薦めたくない。

それでは本作に宗教的な要素がまったくないのか、私はその点について断言できない。
しかし少なくともマッコイ・タイナーは音楽家の立ち位置から本作に向かっている。
それを商業的と非難する人もいたが、私は違うと思う。
けして聴衆に媚びている訳ではない。
本作の持つ美しいハーモニーは、純粋に彼の精神性との共鳴によって生み出されたものだ。
その方法を彼はコルトレーンから学んだ。
それだけは間違っていなかった。
マッコイ・タイナーは熱心な回教徒であり、今尚現役のジャズピアニストとして活躍している。










echoes of a friend















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(284)MIDNIGHT BLUE

midnightblue.jpg
No.284 2015.4.15



<MIDNIGHT BLUE>





ブルーノート4123番「ミッドナイト・ブルー」問答無用の一枚。
これを悪く言うのは困難だ。
なんたる見事なブルージーミュージックであることよ。
ケニー・バレルはブルースを弾くために生まれてきたような男だ。
タレンタインも適任である。
それになにしろにコンガが効いているなあ。

と、言うのは平成27年の感覚であり、
昭和の恐そうなオヤジはこれをチャカポコと蔑んだ。
そういう人たちは皆もう死んだか、生きていても耳が遠くなり音楽鑑賞から引退した。
替わりに小便だけが近くなってすっかり弱気だ。
偉そうなことを言う元気最早ない。

それはともかく、若い頃威張っていても男ってダメだね。
前にも言ったが結局最後は女性に敵わない。
なにしろ女は元気だ。
羨ましいくらいに。
別に大阪のオバチャンに限った話ではない。
生命体として強い。

男はいつも戦士として使い捨てされるだけだった。
しかし米国海兵隊のような野獣も、私のような文弱の徒も特段の区別をしてもらえない。
太平洋戦争末期、特攻に行かされる学徒の中には離陸直後失神して墜落する者がいたそうだ。
あの時代に生まれ、零式艦上戦闘機に搭るほど優秀だったなら、私はきっとそうなった。
永遠の0では語られる事のなかった真実もある。

男は例外なく強く逞しくなければならないようだ。
実際そういう男もいるが、そうではない者もいる。
それは今も昔も変わらない。
きっとこれからも。
しかし男は戦士としてのみ評価され続ける。
他の評価軸は限定的だ。

現代なら差し詰め企業戦士か。
就活で見られているのは結局その点、つまり戦力たり得るのかという所だ。
弱い男は雇ってもらえない。
辛い話だ。
だが、メガネに適って採用されたとしても、その後の運命はけしてあまいものではない。
若く稼げる時のみ利用され、少しヨレて来たらすぐリストラだ。
良くて出向。
南方の島嶼に送られ、タコツボでじっとしておれ、敵が来るまで動くな、来たら一人一殺であると玉砕を強要されたあの頃と基本は変わらない。

家庭が、つまり女性が期待しているのは繁殖力と子育ての費用稼ぎの戦士だ。
いや場合によっては繁殖力も必要とされないな。
本当に自分の子かどうかなんて事、普通殆どの男は判別不能だから。
閑古鳥の「托卵」みたいなものですね。
(斯く言う私も多分別の意味で托卵されたとも、或いはしたとも言える)
にも関わらず、この頃では「育メン」などと持て囃され、専業主婦の嫁に乞われるままに育児家事まで負担させられる始末だ。
それで最後に待っている運命が熟年離婚では立つ瀬もなかろう。
アホな男たちはそれでもまだ気付かない。
男は黙ってサッポロビールだと。
いいか、あんたが元気なのは今のうちだけなんだよ。
それは究極の空元気かもしれないんだ。

ご同輩、男はバカでそして悲しいねえ。
せめて酒なと飲んでくれたまえ。
ブルーなミッドナイトにチビチビやりながら来し方行く末を思うそんな時、もしも音楽が必要なら本作を薦める。
この盤だけは男のものだ。
女には全然必要ない。
特に我妻には。
やけに寝付きの良い彼女にあるのは精々イブニングまでで、ミッドナイトなんか有りはしないからだ。


















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ジャンル : 音楽

(285) Again

again.jpg
No.285 2015.4.18



<Again>





JBL4344MK2を買ったのはもう15年も前の事なんだな。
ビーナスレコードがハイパーマグナムサウンドを標榜し、オーディオマニアに売り込んできた頃だ。
私はビーナス以前のエディ・ヒギンズを知らなかった。
上手く売ったと思う。
エディ・ヒギンズの晩年はおかげで幸せだっただろう。
良かった。

4344MK2は結局のところあまり良くなかったが、ビーナスのエディ・ヒギンズだけはそれなりに鳴った。
地獄で仏のヒギンズ盤を、だから私は片っ端から買った。
私にはレコードやCDや本を売るという発想が皆無だ。
そんな訳で今でも我家にエディ・ヒギンズのCDがたくさんある。

昔宴席で、女性と別れるのが苦手なせいで交際相手が増えて困ると言ったことがある。
「それは女にモテるという自慢話か?」とスゴまれた。
でもそうじゃない。
そんなの決まってるじゃないか。
ただ別れ話を切り出す勇気がなかっただけなんだ。
ごめんなさい。
だめな男だった。

だが考えてもみられよ。
若い頃なら普通、一年に一人や二人異性と知り合うでしょう。
そのうち半数の方とお付き合いしたとして、誰とも別れることなく5年後を迎えたら、結構大変なことになっている。
いや、ホントだめな男です。




今日から小旅行です。
本作収録曲とちょっと繋がる街へ。
みなさん、お元気でお過ごしください。
ジャーマンウィングス9525便や、マレーシア航空370便のような事がなければ、いずれご報告出来ると思います。
ではまた。

ハバナイスィーケン!










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番外編 ㊲

む~ら






<番外編 ㊲>






出町柳のジャズ喫茶「む~ら」を訪ねた。
ごく普通の住宅街、ちょっと分かり難い場所にある。
防音対策らしく、入り口のドアが二重になっているが、それでも盛大に音が漏れて来る。
特にズンズンと腹に響く重低音だ。
こりゃー期待出来そうだ。






む~ら1

先客が二人いた。
年配の男女で、おそらくは町内の方だろう。
マスターと楽しく語っておられる。
「どちらの県から?」
マスターが早速相手をしてくれる。
「ええ、北海道です」
「それはそれは、遠いとこからようおこしやしたなあ!」
「観光かなにかで?」
「こちらのお店を訪ねて来ました」
私、こういうセリフを平気で言えます。






む~ら2

スキンヘッドの厳つい店主、ざっくばらんな方で色々と話が弾む。
店内に大きな水槽が二つあり、アロワナを飼っておられた。
ジャズ喫茶で魚(それもアロワナだっせ!)と水槽は初めて見た。
それにしてもペットも様々である。
昨年暮れに20年愛した「紅子」(もちろんアロワナ嬢)を亡くしたとかで寂しそうだった。






む~ら3


かかる曲は少し古め。
モダン以前のものばかりだ。
「家でもレコードかけてはるの?」
「ええ、まあ」
と私。
「オーディオにも凝ってはんの?」
「はあ、それなりに・・・」
「どんなん聴きはりまんの?」
「まあ、色々と何でも聴きますけど(ちょっとこの店の雰囲気と違うかも・・・)」
マスターの方が10歳くらい若いのではないか。
プロレスラーとも地回りのやくざとも見える風貌に、終始気圧され気味だった。
私は昔、河原町荒神口にあった店でバイトしていた話をした。
その店はもう20年以上前になくなっているが、最後のバイトだった男が現在「む~ら」の常連客だという。
聞けばその男は私より10歳以上若いというから、もちろん面識はない筈だ。





しあんくれーる





マスター曰く、夕方一度閉めて片付け夜は毎日ライブだという。
「む~ら」は今年で10年目。
ジャズ喫茶だけなら2年もたなかった、とマスターが言う。
「そうかもしれませんね・・・でも文化財みたいなものですから。私、全日本ジャズ喫茶保存会の者で、日本中のジャズ喫茶を周って採点しているんですよ」
と、ささやかな反撃であるが、この作り話には何か詐欺的なものを想起したかもしれずマスター反応がない。
そろそろ妻が退屈している筈だった。
「頑張ってください、また来ます」

日本中のジャズ喫茶を周ろうと思っているのは本当だ。
急がないと皆なくなってしまう。
ジャズ喫茶の絶滅が先か、私がくたばるのが先かという重大な局面に入りつつある。
我々は「む~ら」を後にした。
とうとうエリック・ドルフィーのリクエストを言い出しかねたまま。









京都4

さて、この日の宿は昨年夏に泊まった「俵屋」の向かい側だった。
同じように何百年もの歴史のある宿だが、今回は新館しか空いておらず思った以上にモダンな空間だった。







京都3


さり気ないが気が利いている。
良く見ると相当贅沢でもある。
しかしけして目立ち過ぎない。
感心したのは風呂だ。
各室に内風呂があり、無論大浴場などというものはない。
檜の浴槽は普通かもしれないが、壁床天井が無垢の天然木で構成されている。
普通ならバスパネルなどの樹脂系の材料か、精々頑張っても石材にするところだ。
だがこの宿の風呂は潔く天然木。
扉も木製だ。
桶も椅子も。
傷んだら交換すればいい、という発想。
これが本物の贅沢なんだろう。

こういった宿では主(たいてい女将)が食事中挨拶に来る。
強いて言えば、あれはやめたらどうだろう。
お互いその方がハッピーだと思う。







京都2

朝まで気が付かなかった。
床の間の壁が二重構造になっていて、朝日が当たると柊の葉が浮かび上がる。







京都1


次第に雨模様へと天候が変わっていった。
我々の部屋は三階だが、坪庭を設えてある。
京の雨は風情があっていい。






京都8


今回残念ながらブルーノートは営業していませんでした。












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(286) SILENT JAZZ CASE 2

silentjazzcase2.jpg
No.286 2015.4.25




<SILENT JAZZ CASE 2>





2010年の一作目(No.162)から5年の時を経て、先頃「SILENT JAZZ CASE 2」が出た。
クラブジャズの本当のところはわからない。
多分一生わからない。
スムーズジャズという訳のわからないものがあるけれど、クラブジャズとは結局のところ「スヌーズジャズ」とでも言うべきものだ。
なんだか金太郎飴のようでどこを切っても変わらない。
島裕介が何故こうしたものをやるのか、それもわからない。
「名曲を吹く」の諸曲や「海を見下ろして」との比較でどちらが上位にあるのか聞いてみたい気もする。
だが答えは聞かずとも明らかなように思えて怖くて聞けない。
音楽的により複雑であり、「能力」を存分に発揮しやすいのは間違いなくこちらだからだ。
彼は現代の有能な若手音楽家である。
だから怖くて私は聞けない。

では本作は私にとって全然ダメか?
そうではないから困る。
何はともあれかっこいいのだ。
認めざるを得ない。
訳もわからず、闇雲にかっこいいと。
だから遂、繰り返し聴いてしまう。

彼はたくさんの引き出しを持っており、それをどう使うかどうやったら音楽をかっこ好く作れるか、それをを熟知している。。
どこをどうすれば女が悦ぶか、隅々まで知り尽くしたドンファンのようだ。
だから私のような昭和のオヤジを手玉に取るなど造作もない。
島裕介はいつも冷静にリスナーを観察している。
そして的確に急所を付いてくる。
見事だ。
しかし、一層 SILENT JAZZ CASE ならば、先ずは一作目を推す。
「手心」を感じる分、多分一作目が聴き易い。
二作目は一段とマニアックである。
こちらを先に聴くのは少し危険だ。

「お望みなら世界一のロックバンドを作ってみせる」
かつてマイルス・デイビスはそのように豪語した。
しかし、それは無理だったと私は思う。
マイルスにそのような柔軟性はなかった。
ただ「へのってた」だけだ。
島裕介なら?
世界一はどうかわからない。
だが、日本一のロックバンドなら案外いけてしまうのかもな。










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(287) SILENT JAZZ CASE R&B

RB.jpg
No.287 2015.4.29




<SILENT JAZZ CASE R&B>





これも島裕介の仕事である。
本作の存在を私は知っていた。
しかし私がこれを買わないことも、おそらく彼は知っていた。
ダウンロードのみの販売だったからだ。
それがいつの間にか密かにCD版が出ていたのだ。
恋人が他の男に宛てた手紙を見てしまったら、しかも遠い昔の出来事ではなく現在進行しているらしい話であり、どうやら本気であるらしきものであったなら、あなたはきっと私のような心境になるだろう。
聴いてはならないものを私は聴いたようだ。

本日は祝日である。
昭和の日だそうだ。
このままでいくと、あと一万年も経ったら毎日が祝日になるのではないか。
それはいいが、水曜日は元々私の定休日なので、どうも今日は損した気分だ。
だが天気も良く、テニス日和となった。
いいぞ。
今日から屋外テニスが始まるのである。
インドアと外ではもうまるで違う競技になるから不思議だ。
あれ?オレのサーブってこんなに遅かった?
シーズン当初はそんな風にいつも戸惑う。
そしてそれが普通になっていく頃、私は真っ黒に日焼けしているだろう。
今年も怪我などしませんように。
















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Author:バロン ド バップ
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