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(116) 鉄の指とタコの指

red.jpg
NO.116 2013.9.4



<鉄の指とタコの指>





ベーシスト、レッド・ミッチェル。
享年65歳。
20年前に亡くなっている。
今どきのウッドベースにはナイロン弦が張られていたりもするが、レッド・ミッチェルはぶっといスチール弦をモノともせずかき鳴らす、鉄の指を持つ男だった。
巨大な音の塊から削り出された無垢のベースがケニー・バロンのピアノを押し退け、ベン・ライリーのドラムをねじ伏せて飛んで来る。
そんなゴツいベースを賞味するのが本作であった。
それが変わってしまった。
タコに指があるのか実は知らないが、まさに軟体動物が奏でるが如きフニャちんベースに。
何ゆえそのような事になったものか、もちろん理由はある。
我が家の新スピーカー導入騒動の顛末は既にお話しした。
JBL4344MK2のダメダメ振りに愛想を尽かして新規作成した新スピーカー。
それはタテマツの箱にエール音響の15インチウーファーをダブルで組み込み、JBLの2インチドライバーと山本音工の巨大木製ホーンを載せ、更にエール音響のツィーターをプラスしたオールアルニコ構成という、字面だけ見ればいい音がしない訳はないというセットである。
だが、字面だけでいい音が出れば世話はないのがオーディオという世界である。
販売店の接続ミスなどもあり、当初はまったく期待外れの音を出した新スピーカーであった。


jbl.jpg


期待外れだったのは音ばかりではなく、木製ホーンは輸送事故によって無残に傷ついており、敢え無く最初の交換となった。
ところが交換したホーンが今度は割れてきたのである。
乾燥によるものだと言うが、山本音工では修理可能なのでその対応でと言う。
ホーンは集成材で作られているが、割れた集成材をどのように修理するものか私は半信半疑であった。
しかし何が何でも新品交換を主張するのも何だか大人気ない。
修理できると製作側が言うのだから任せようと思った。
結果は危惧した通りとなった。
一見きれいに直ったかに見えたホーンであったが、実際は表面を研磨してその部分を塗り直しただけだ。
更に乾燥が進み、同じところが同じように割れてきたのである。
ホーンを新品交換するように、販売店を通じて現在交渉中だ。

不具合を生じたのはホーンだけではなかった。
タテマツの箱が口を開いて来たのだ。
説明が難しいが、フィンランドバーチ合板製のこの箱の天板と底板は、集成材の側板に載っておらず、側板を横から貼り付ける構造になっていた。
その上に総量70キロ(私の体重よりだいぶ重い)はあるホーンやツィーターが乗っているのだ。
そのせい(だと私は思う。タテマツの見解とは異なる)で天板・底板と側板との接合部分が離れてきたのである。
それだけではなかった。
ウーファーを箱に固定するボルトの長さが足りず、一発40キロ以上(妻より重い)というウーファーの重量を支えきれなかった箱側のオニメナットを破損させてしまった。
なんとタテマツも交換である。
再製作にあたり、私は天板・底板を側板に載せる構造に改めるよう主張した。
だが、先代まで仏壇を作っていたというタテマツは自分の技術力に自信を持っており、若干の補強と変更で問題は解決すると言って譲らなかった。
長い製作時間の経過後に、二番目の箱がやってきたのが一年ほど前。
同じ事になったのはその三か月後であった。
すったもんだの挙句、箱は再度作り直しという事になった。
私はたっぷり芝居がかった口調で販売店のK氏に詰め寄った。
「今度こそ私の希望する構造にしてください。三度作って三たび同じ事になるのであれば、それはもうバカとしか言いようがない!」
私の主張が了承されたのである。
あとは箱が出来てくるのを待つだけ、そう思われた矢先であった。
タテマツが体調不良を理由に廃業すると言い出したのである。
タテマツとK氏による長いやり取りが続いた。

結論。
一.タテマツは自分の所では最早製作不能なので、下請けに外注の形で製作する。
二.結果として塗装のタッチが前の二つとは異なる仕上がりとなる。
三.側板の材料の集成材を改め、全てフィンランドバーチ合板とする。



2441.jpg

そのような経過を経て、三番目の箱がやって来た。
そいつは我が家のオーディオを全く違う傾向の音に変えた。
レッド・ミッチェルをタコベースに、である。
古来、このようなときにはこう言われる。
「このタコ!」と。




jbl4344.jpg
在りし日の4344mk2の雄姿。今見てもかっこいい。音こそ良くなかったが、雰囲気だけは抜群だった。



もう一つ(他人が聞くと)面白い話がある。
先日新しい箱を入れて音出しの際の事だ。
どうも音が悪いと販売店K氏。
プリアンプの「MarkLevinson No.26L」がおかしいと言い出す。
特にボリュームをゼロにしても左チャンネルの音を絞りきれないのはおかしいと。
アメリカ製のアンプなどというものは、それくらい普通だと私は思っていた。
K氏は携帯で連絡を取り始める。
「レビンソンのアンプでマルチをやってるお客さんなんだけどね・・・そうですか・・・もうパーツがないんですか・・・」
ハーマンの代理店の話では26Lのボリュームは既に欠品となっていて修理不能だという。
「今店にあるプリを試しに聴いてみてください」
K氏によれば、たいそう音がいいというそのプリアンプは、アメリカ製のエアーというメーカーのものだという事だった。
それはいくらするのか?私は一応聞いた。
「300万です」
事もなげにK氏は言った。

K氏が引き上げて間もなくの事である。
私の携帯が鳴りだした。
「さっきKさんから電話があったんだけど、あれって貴方の事じゃないかな」
私の町でレビンソンやJBLなどのハーマン製品の修理を請け負っているSさんからだった。
昔から色々世話になっている人である。
「やっぱり、そうじゃないかと思ったんだよ。26L持っておいでよ。只で点検してあげるよ」
翌日私は26LをSさんの作業場に持ち込んだ。
Sさんに26Lを見てもらうのは四度目だった。
「一切異状なし!」とSさんが宣言するまで30分かからなかった。
私はあの事を思い出していた。
最初の箱が来た日の事である。
なんか音が変だ。
その時も販売店K氏はそう言ったのである。
私もそう感じていたから、これは大変なことになったと動揺していた。
大枚はたいて出た音がこれか・・・
K氏はアキュフェーズのチャンネルデバイダーDF-45を疑い、店からPASSのXVR1を持ち込んだ。
音は少し良くなったように思えた。
藁をもすがる、まさにそんな心境であったろう。
私は言われるままにチャンネルデバイダーを入れ換えた。
その後、右チャンネルのウーファーが一つ逆相(+-を逆に繋ぐ接続ミス)になっているのを発見したことは既に話した。
あの逆相事件は本当にミスだったのか?
26Lのボリュームに異状がない事や、パーツとして既に欠品している事も本当に知らなかったのか?
何れにせよオーディオを、特にスピーカーを新調した時は、初めからいい音が出るなどと思わない方がいい。
音は変わる。きっと変わる。
だからこのタコベースを、いやはっきり言おう、このタコな低音を、私はけして諦めない。










 
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(117) オーディオの不思議

nabesada1.jpg
NO.117 2013.9.15



<オーディオの不思議>





1961年に録音された、渡辺貞夫さんの初リーダー盤である。
我家では普段、ヤマハのハードディスクプレーヤー(CDR-HD1500)でジャズをかけ流し状態にしている。
あれ?これなんだっけ?いい音じゃないか、とリストを確認させられたのが本作だった。
正直驚いた。
50年以上前の録音には聴こえなかったからだ。
ゴリゴリのウッドベースが半世紀の時を越えて迫り来る。
ウソでしょー?という感じ。
音は変わる、とは言ったが、もちろん大半は願望であり、これが変わらなかったらどうしよう・・・という心細さが本心。
オーディオは厄介である。
どうしようもない音が一晩で麗しく変身する時があり、そうであるならば、こんなにいい音していいの?という音が翌朝にはとんでもない音になっている時もあるのがオーディオだ。
だがしかし、前回「タコ低音」と散々毒づいた音が思いのほか早く回復した事に胸を撫で下ろしている。
たとえこれが一時であるにせよ。




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上が我家の低音を司るパワーアンプ(レビンソンNO.23L)である。
本当は23.5Lが欲しいというのは内緒にしている。
機嫌を悪くされては困るからだ。
ここは言霊の国なのだから。




2013091319060000.jpg

CDプレーヤーであり、CDR-HD1500のDAコンバーターとしても活躍するNO.390SL。
私はマークレビンソンというブランドが相当好きだ。




2013091319020000.jpg

そんな私に販売店のK氏が勧めてきたのが上段のプリアンプ「AYRE KX-R」。
300万だという。
強引な貸し出し試聴に、私は少しも心を動かされなかった。
下段が愛機NO.26Lの勇姿。
オーディオの貞操は堅く守られた。




2013091319060002.jpg

我家のシステムは2Wayマルチである。
500Hz辺りで信号を分ける機械がこれ。
PASSのチャンネルデバイダーXVR1。
諸々の経緯からか、私はあまり愛情を感じていない。
つまらないことを言うな。
心を広く。
そんな声が聞こえなくもない。
だが、相性の良否というものは何も、男と女、人間と犬に限られるものではない。
それは無論事実ではあるのだが、
しばしば時間の経過が、不運な出会いを清算する事があることも私は知っている。











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バロン ド バップ

Author:バロン ド バップ
音楽がある限り

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