(104) ハーサンズドリーム

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NO.104 2013.2.7




<ハーサンズドリーム>





BLUE NOTE 1557。
本作が吹き込まれた時、リー・モーガンは18歳だった。
信じたくない人は信じなくていい。
たいていの人が信じられまい。
私も信じられない。

老成したトランペットも凄いが、
収録された全5曲の出来栄えもまた信じられない領域にある。
すべてが楽曲として素晴らしい。
作曲アレンジはベニー・ゴルソンひとりによってなされたのだ。
なんという才能だろう。

最も有名な「アイ・リメンバー・クリフォード」、クリフォード・ブラウンの死を悼みトリビュートされたこの曲は冒頭のひと吹き、すでにこの段階でそのアンサンブルに鳥肌が立つ。
この曲の素晴らしさを今更改めて語るのもアレだが、
他の4曲が勝るとも劣らず、なんとも贅沢でお買い得なレコードとなっている。
これはいまどきなかなかない。
CD一枚に「いい曲」が一曲でもあればましな方で、大雑把に言えば5枚に一曲10枚に一曲あるかどうかだ。

「アイ・リメンバー・クリフォード」はB面に収録された曲だ。
A面冒頭の曲は「ハサーンズドリーム」である。
ASのジジグライスがフルートを吹いた。
これが効いている。
私は本作ではこの曲が一番好きだ。

テンサイは忘れた頃にやって来るらしいが、どうもなかなかである。
ベニー・ゴルソン級の才が突如出現して、大名曲を量産してくれないかな。
そうすればジャズの閉塞感はたちまち霧散するであろう。
私のささやかな夢は、精々そんなところか。











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(105) 最初と最後

its time
NO.105 2013.2.9



<最初と最後>





マイケル・ブーブレが歌う Save the Last Dance For Me 。
「ラストダンスは私に」と越路吹雪が歌い、いじらしくも切ない女性の思いを込めた演歌調な楽曲のようだが、原曲の歌詞を見ればこれは男の歌だ。
ウッディ・アレン似のちょっと冴えない男が、何かの間違いで素敵な女性とカップルになったが、ダンスパーティーでは気後れしてしまうのか、たくさんの男から誘われる自分の彼女にこう言うのだ。
「あなたを狙うあの男と抱き合って踊っていいよ。君の手を握った男に微笑んでもいいんだよ。でも忘れないで、あなたを送っていくのは誰か、今夜誰の腕のなかで眠るのか。だからダーリン、ラストダンスは僕と」

これはこれで切ない。

ある男が女性に気持ちを告白された。
その男は女性にもてるので、その時三人の彼女がいたそうだ。
三人というのが微妙にリアルな線を突いている気がする。
四人ではどうもしんどい。
さて、男は正直に三人の女がいる事を話した。
すると女性は思い詰めた表情で言ったそうだ。
「四番目の彼女でいいんです・・・」

後日このモテ男が言うには、そう(四番目でいいと)は言ったが女というのは結局一番目でないと満足しないのだという。
だからすべての女に君しかいないと言うに限ると。
四番目の女とどうなったかは聞き逃したが、多分別れたのだろう。

男の側からすればどうか。
女は最後の女である事を望むと言うが、男は現在何番目かというよりも、最初の男でありたいという願望がどうもあるようだ。
その視点で言えば、ラストダンスを希望するというのは相当屈折している。
まあ、ダンスくらい別にどうって事ないと言えばその通りだが。
しかしながら、どんなに他の男が誘おうが断り、私が踊るのはあなただけ、
送ってもらうのも腕のなかで眠るのもあなただけですと、
そんな風に言う女性ならそれに越した事がないのも事実ではある。
最初であり且つ最後、ちょっと怖い気もするけれど。

昭和の男は不器用で狭量で面倒くさいが、それ故騙しやすいのが唯一救いなんだとか。










(106) THE REAL ELVIS

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NO.106 2013.2.17



<THE REAL ELVIS>





amazonではこの三枚組CDが送料込で540円。
私はこれを近くの実店舗にて980円で購入した。
440円損した訳だが、これがことのほか悔しい。
入手時はずい分得した気分だったのだが。
一方で44,000円の電源ケーブルを、鼻で笑うところのあるオーディオマニアの金銭感覚はどこかおかしい。
何れにせよ、CDの国際価格は相当やばい事になっているらしい。
国内盤3,000円とかはもう、はっきり言って法外、論外である。

さて、エルビスであるが、実はまともに聴くのは初めてと言っていい。
収録された120曲全てが1956年~1963年に録音されている。
これはジャズの黄金時代と完全にダブっているのだ。
バックのミュージシャンについてクレジットされていないので想像に過ぎないが、おそらく多くのジャズメンがこっそりアルバイトしているのだろう。
彼らはその時代の最強かつファーストコールのスタジオミュージシャンでもあった筈なのだから。
だから今回は敢えて番外編扱いとしなかった。

これを聴けばエルビス・プレスリーという歌手が、伊達に有名だった訳ではない事が誰にも納得できるだろう。
ただ、私がエルビスに対して抱いていたイメージは「ロックンロールの帝王」といったものだったが、実際聴いてみれば少しハードなところもある普通のボーカルものである。
ロカビリーというのはそうしたものだったのだろう。
日本でも「ウエスタンカーニバル」と称して日劇あたりでやっていた音楽はこれに近いものだったのか。
確かにプレスリーにもウエスタン・ミュージックの匂いがする。
ジョン・レノンはプレスリーから多大な影響を受けたと語っていた。
だが、プレスリーとビートルズの間には連続性が感じられない。
プレスリーはただ与えられたものをソツなくこなしているに過ぎない。
その点でビートルズとは決定的に異なり、プレスリーはジャズを駆逐する天敵とはなり得なかった。
だからジャズの黄金時代に、別のスタジオで静かにこんな事が起きていたのだ。











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